時短解除から1カ月 歓楽街のにぎわい遠く 徐々に回復も団体客なし

個室が埋まった店内で、料理を運ぶ従業員=長崎市、鈴の屋銅座店

 新型コロナウイルス禍を受けた県内の飲食店への営業時間短縮要請が解除されて1カ月余り。県内では感染状況が落ち着いてきている一方、歓送迎会シーズンの歓楽街に例年のにぎわいは戻っていない。会食の規制を続ける企業がある中、飲食店関係者からは「期待しても無理」「外出を促すきっかけも必要」という声がもれる。
 県は1月20日~2月7日、県内全域の飲食店やスナックなどの遊興施設に、午後8時までの時短を要請。期間終了後も、長崎、佐世保両市民に同月21日までは不要不急の外出自粛を求め、現在も県民に対し10人以上、長時間の会食を控えるよう呼び掛けている。
 今月10日午後7時すぎ、長崎市銅座町の居酒屋「鈴の屋銅座店」では従業員が次々と複数の個室に注文の品を運んでいた。週末を中心に予約で埋まるようになり、売り上げはコロナ前の6割ほどまで回復。ただ、サラリーマンの団体客はなく、2~8人の小グループがほとんどだ。店長の浦川和泰さん(54)は「昔は(客の入れ替わりが)2、3回転していたが最近は1回転。今の時期は期待しても無理」と冷静に受け止める。
 同市船大工町の居酒屋「旬肴まくろう」の店主、小林貴一さん(29)も「まだまだ少ない」。これまでは観光客や「Go To イート」食事券を利用する客の割合が高かったため、「大型連休には県外客も来るかも。使用期限が6月末まで延び、ありがたい」と期待を込める。
 本来なら2次会などでにぎわう店はさらに深刻だ。近くのガールズバーの男性経営者(41)は「客足は以前の半分。コロナだけが原因ではない。景気が戻らないと金を使って飲みには出てこないのでは」とあきらめ顔。ラウンジのママ(70)は「ずっと厳しいまま。常連さんは『もうちょっとしたら来るね』と言ってくれるけど」とため息をつく。
 一方、客側にも足を運べない事情がある。三菱重工業は1月8日以降、長崎造船所を含むグループ全体に対し、社員の会食を禁じたまま。県内で200人以上を雇うコールセンターの運営会社も「気を緩めないように」と会食禁止を継続している。県は、1月4日以降、職員に会食を控えるよう求めていたが今月1日に緩和。ただ、5人以上の会食と2次会以降の参加は控えるよう通知している。
 「今は店が感染対策を徹底していても、外出を促すきっかけがないと自粛は続く」。同市銅座町で中華料理店など3店舗を営む王文建さん(46)は行政のメッセージや喚起策の必要性を訴える。「宿泊施設だけでなく、どこでも使える商品券のような施策を打ち出してもらいたい」と注文を付けた。

 


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