ホンダ フィット販売不振の犯人は“グリル”!? 初夏の年次改良に続き2021年中にも大幅改良か

ホンダ フィットといえば、同社を代表するコンパクトカーだ。2001年に初代が登場。デビュー早々に乗用車販売台数1位の座を常連のトヨタ カローラから奪取するなど、大成功を収めている。しかし2020年2月に登場した現行型の4代目フィットは、デビュー1年後の2021年2月の販売ランキングで12位と、かなり元気のない状況だ。これはどうしたことか。今年2021年にデビュー20周年を迎えるホンダ フィット。近々行われそうな年次改良、そしてその後も続けて行われる一部改良について予想する。

Honda FIT e:HEV HOME(ホンダ フィット イーエッチイーブイ ホーム)[2020年2月13日発売]

2021年初夏、年次改良の目玉は“FIT Modulo X(フィット モデューロ エックス)”!

写真は東京オートサロン2020に参考出品された「FIT Modulo X Concept」

フィットの新たな顔“フィット Modulo X”がいよいよ登場か

フィットの販売実績については後ほど振り返るとして、現行型(4代目)ホンダ フィットの一部改良に関する情報を、現段階で分かっている限りでご紹介しよう。

まずは2021年初夏(6月前後!?)に、4代目フィット初の一部改良が実施される模様だ。これはデビュー1年目の年次改良で、装備やグレード展開の見直しが図られる。

目玉は、ホンダの純正アクセサリーメーカーであるホンダアクセスが手掛けるコンプリートカー“Modulo X(モデューロ エックス)”の投入だ。

フィット Modulo Xのプロトタイプモデルは、現行型フィット発売直前に開催された「東京オートサロン2020」(2020年1月10日~12日)の会場でサプライズ披露されており、発売が待たれていたモデルだ。

Modulo Xは、ホンダを知り尽くしたエンジニアが磨き上げたカスタムコンプリートカーで、ステップワゴンやフリードといったミニバンから、軽スポーツカーのS660に至るまで様々なモデルにラインナップされている。

共通するのは、ノーマルに比べ上質さを増した乗り心地とハンドリング。ガチガチのスポーツモデルという訳ではなく、上級グレードとしての役割も果たす。

フィット Modulo Xも、シリーズの最高峰という位置付けだ。エクステリアもエアロパーツや専用グリルなどを備え、標準モデルとは大きく印象を変える。

エンジンラインナップは他と同様に1.3リッターガソリンと1.5リッターe:HEV(ハイブリッド)。価格帯は、コンパクトカーとしてはちょっとお高めな200万円台後半から300万円台中盤となる見込みだ。

デビュー1年にして“NESS”の印象的なカラーリングが廃止に

2021年3月12日(金)現在、フィットについてホンダの公式ホームページ上に気になる表記が掲載されている。

「こちらのカラーは、まもなく生産終了となります。一部店舗では、お買い求めいただけない場合がございますので、詳しくは販売会社までお問い合わせください。」

具体的には「NESS」「e:HEV NESS」のツートンカラー(ライムグリーンと組み合わせるもの)タイプが該当する。

フィットネスウェアを想起させる、ちょっとフワちゃんっぽい(笑)色合いが特徴のNESS専用2トーンカラー

これは、スポーツグレードの新提案として4代目で新登場した“NESS”を象徴する斬新カラーリングだったが、NESS自体がフィットの販売全体で6%(2020年3月発表のホンダ プレスリリースより)という状況にある。手間のかかる特殊な塗分けの2トーンカラーは、わずか1年で廃止となるようだ。

このほか、大がかりな変更はないが、細かな装備の見直しなどが行われる。なぜかこれまでなかった純正ナビゲーションシステムのApple CarPlayやAndroid Autoへの対応も行われる模様だ。

戦犯は“グリルレス”!? 次なるマイナーチェンジでフロントグリルを追加か

開発コンセプトに基づいた親しみやすいデザインのフロントマスク

現行型のホンダ フィットは、SUVモデルのCORSSTAR(クロスター)を除く全モデルで、グリルレスフロントフェイスを採用している。数値で語れない心地よさを追求したという、4代目フィットの開発コンセプトに基いたもので、親しみやすさを狙った。

その表情はかわいらしく穏やかな印象で、なかなか好ましいものだ。

ただし一方で、グリルレスフロントフェイスに対し、不満の声も少なからずあるという。

穏やかな表情を見せるグリルレスフロントフェイスを採用した4代目フィット, フィット クロスターだけは「フロントグリル」が存在している
穏やかな表情を見せるグリルレスフロントフェイスを採用した4代目フィット, フィット クロスターだけは「フロントグリル」が存在している

首都圏のあるホンダ販売店で聞いたところ「おおむね好評なのですが、お客様によっては“押しが足らない”“物足らない”と言われることがあります」と教えてくれた。特に男性客にその傾向が強いという。

ホンダアクセスの純正アクセサリーには、なんと後付けのフロントグリルが用意されており、どうしてもというお客にはこちらを勧めてみるのだとか。そういえば、ホンダアクセスが手掛けるフィット Modulo X コンセプトにも大きなフロントグリルが備わっていた。

どうやらホンダ社内でも、フィット販売低迷の理由をグリルレスデザインに紐付けようとする声もあがっているようだ。

フロントグリルを拡大した特別仕様車が登場する!?

写真は現行型フィット用ホンダ純正アクセサリーのフロントグリル装着例

そこで急遽、グリル開口部を広げた特別仕様車を投入する計画が立ち上がっている。発売時期は不明だが、マイナーチェンジを待たず、2021年の年次改良前後に投入される可能性もある。

またこれが好評なようなら、次のマイナーチェンジ(2022年?)に他グレードへ波及するかもしれない。

早ければ2021年中にも「FIT SPORT」を日本にも導入か!?

広汽本田「飛度」(中国向け「ホンダ フィット」)

実は中国市場向けには、フロントに大開口部を持つ「FIT SPORT(フィット スポーツ)」が販売されている。

さきほどのフロントグリル仕様とは別に、販売が振るわない“NESS”を、中国仕様に準じたエアロバンパーなどを備えた“SPORT”(仮称)に変更するプランも検討されている模様だ。

こちらは2021年中、もしくは2022年早々に行われるマイナーチェンジ時に投入されるものと思われる。

また、FIT SPORT(仮称)国内投入の際には、パワートレインの性能向上などさらなる隠し玉も控えているとの不確定情報もある。こちらについても現在調査中なので、詳細が判明次第お知らせしていく!

ホンダ フィットの2020年の年間販売台数ランキングは4位で前年比132%の実績だが、2021年に入り苦戦中

4代目フィットの世界初公開は東京モーターショー2019会場だった

2020年2月のデビュー時の立ち上がりは好調だった

現行型の4代目ホンダ フィットの売れ行きについて、改めて振り返ってみよう。

2020年2月13日に発売を開始し、翌3月の自販連(一般社団法人 日本自動車販売協会連合会)調べによる乗用車の月間販売ランキング(軽自動車除く)では、トヨタ カローラに次ぐ2位にランクイン。ホンダがデビュー後約1ヶ月後の2020年3月16日に発表したリリースでは、1万台の月間販売計画に対しおよそ3倍となる約3万1000台もの受注を集めたとし、好調な立ち上がりを見せていた。

また2020年1月から6月の上半期で見ても、トヨタ ライズ、カローラに次ぐ3位(5万29台)と、ライバルのトヨタ ヤリス(4位:4万8129台)を上回る成績を残している。

月間販売台数ランキングでは徐々に下位へ移行

ホンダ フィットの2020年における年間ランキングを見てみると、4位(9万8210台:旧型含む)にランクインしている。月平均で約8100台、前年対比で132%の成績だから、決して低迷している訳ではない。

ただし月間販売ランキングで詳細に見てみると、デビュー早々から徐々に順位を落としていることがわかる。

2020年2月のデビュー以来、3月と4月の2位がフィットの最高位。5月以降は3位、4位、5位、4位となり、9月以降は6位、7位、8位、7位と推移している。

そして2021年。1月は10位(5889台)、2月は12位(5782台)と、デビュー1年にして前年の月平均8100台を大きく下回る状況に陥っている。もはやデビュー時の勢いは去り、完全に失速してしまった状況だ。

フィット低迷の陰にN-BOXの影響も

N-BOXもフィットと共通する穏やかなイメージのデザインだが、押しの強い“N-BOXカスタム”がある点は大きな違いだ

初代や2代目フィットの頃ほどの勢いは見られないのは、同社の軽自動車「N-BOX」の影響も大きそうだ。

2020年の年間販売台数は、実に19万5984台。もちろん年間1位だ。これでも2019年と比べると減少していて、前年比77.3%の実績だというから驚く。

コンパクトカーではなく、今は軽自動車で十分に用が足りる。そう考えるユーザーがここ20年で大きく増えた。

N-BOXの輝かしい実績の中には、少なからず自社銘柄からの代替も含まれており、フィットも例外ではない。

かつてはNo.1だったフィットが、今ではすっかりその座を軽のN-BOXに明け渡す格好になってしまった。

2021年は、初代フィットデビューからちょうど20周年を迎える。まだまだ起死回生策があるのかは不明だが、いずれにせよフィットにとって試練の1年となりそうだ。

[筆者:MOTA(モータ)編集部]

© 株式会社MOTA