『空き家』移住者の要望で改修 進む地方回帰 雲仙市内で取り組み

空き家バンク登録物件の状態を確認する荒木さん(中央)ら=雲仙市小浜町

 新型コロナ禍で都会からUターン、Iターンする地方回帰が進む中、長崎県雲仙市では県外からの移住促進のため、移住希望者と空き家の所有者をマッチングする民間の「空き家活用団体」が、移住者の要望に応じた物件のリフォームを始めた。空き家の所有者は県市の補助で改修ができ、毎月の賃料も入る仕組み。市内の空き家活用を加速させると期待されるが課題もある。

 雲仙市の2018年の空き家数は2540戸で、総住宅数に占める割合=空き家率=は14.2%(本県15.4%)。空き家は増加傾向だが、市運営の空き家バンク登録物件(賃貸、売却)の数は毎年30戸前後で推移。「老朽化して改修が必要だが資金がない」「仏壇が置いてある」「知らない人には貸したくない」などの理由で放置されているケースが多く、登録数は伸び悩んでいる。
 同市の相談窓口を介した移住は昨年度76世帯(152人)で、うち空き家バンクを活用したのは7世帯(10人)にとどまる。バンク登録物件は家財が置いてあったりして、すぐに入居できないため民間賃貸住宅を利用するケースが多いという。

□共通の課題
 空き家活用が進まない状況は県内自治体共通の課題。県は昨年度から、県外からの移住希望者と空き家の所有者をマッチングし、空き家を借り上げ、移住者の要望に応じて改修する民間の「空き家活用団体」の設立、運営を支援している。改修費は上限150万円で、うち3分の2を県市が補助。団体が物件所有者へ支払う借り上げ料に、改修費、団体の運営経費などを上乗せして、移住者が支払う家賃を設定する仕組み。現在、雲仙市のほか五島、南島原、壱岐の各市で団体が設立されている。
 福岡県から雲仙市小浜町に移住し、伊勢屋旅館で料理長を務める萩尾征司さん(56)は昨年9月から、同市認定の空き家活用団体「雲仙市まちづくり株式会社」の仲介でリフォームした住宅で生活。「かなり傷んでいたが、トイレや床、壁などを改修してもらい快適に過ごせている」と満足そうに話す。
 新型コロナ禍の中、本年度は同市の移住相談窓口への直接相談が2月末までに83件あり、昨年度を上回るペース。市担当課は「コロナ禍で地方移住の関心が高まっている。空き家活用団体の活動が広まり、空き家バンク登録数が増えれば、移住が促進するはず」と期待している。

□登録に苦戦
 一方、昨年7月に活動を始めた同社がこれまでに活用契約を結んだのは3戸。事業推進リーダーの荒木清文さん(62)は、市内で活用できそうな空き家の掘り起こしを進め、これまでに100戸余りの所有者にバンク登録や活用契約を勧めているが、「大半は断られる。10戸にお願いして1戸バンク登録してもらえれば良い方」と苦戦。「空き家は親から引き継いだ大切な資産。放置しておくと傷んで資産価値が下がってしまうが、補助金で改修して借家にすれば維持管理ができる」と協力を呼び掛けている。
 空き家活用団体は、スタッフ人件費や必要経費などの一部を県市からの補助でまかなっている。しかし、補助は3年間限定のため、契約物件数を増やさないと運営が厳しくなっていく。同社取締役の城谷雅司さん(50)は「空き家活用は都会からの移住促進に寄与でき、地域の活性化につながっていく。空き家の所有者の理解を得て活動を続けていきたい」と意気込んでいる。

空き家バンク登録物件の所在地を確認するスタッフ=雲仙市小浜町、雲仙市まちづくり株式会社

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