【マーティ&上坂すみれ 昭和・平成ソングって素敵じゃん】マーティが語るYMO「未知なもの…怖いほど新しかった」

マーティーの「怖かった」発言に興味津々の上坂

世界的に有名なギタリスト、マーティ・フリードマンと、ロシア語に堪能な声優・歌手、上坂すみれが懐かしい楽曲を語る連載。今回のテーマは日本が生んだ世界的テクノバンド、YMO。YMOを聴いたマーティは、かつて「恐怖した」という、米国のあるテクノポップバンドについて語りだした。

【YMO論1】

――今回は連載第2回で「改めて!」としていたYMOについてです。上坂さんが生まれたのは1983年に“散開”した8年後ですね

上坂 私、YMOという名前は知ってたんですが、いつだったか、CDをジャケ買いしたのがきっかけで初めてちゃんと聴きました。シマウマが描かれたジャケットの、ベストみたいなアルバムです(Y.M.O.ヒストリー)。その当時、ジャケ買いをよくしてて。

――ジャケットを見て直感的に買ったんですね。マーティさんはジャケ買いしますか

マーティ ほとんどジャケ買いですよ。いい発見が多いです。例えばこのジャケット(「上坂すみれpresents 80年代アイドル歌謡決定盤」)を見つけたら絶対に買います。こういうジャケットだと、中身は明るくてハッピーになれるような気がするじゃん。

上坂 ハッピーになれるか自信はないですが…。内容はジャケットに表れるということですね。

マーティ 落ち込む音楽は入ってないんじゃないですか。

上坂 だいたい正解です。8割ぐらいが明るい曲です。

マーティ 残りの2割はメリハリのためだね。

――本題に戻して、まずは上坂さんがリストに挙げていた「東風」(78年)を聴いてみましょう

上坂 日本的とか東洋的とかありますが、これを何的と説明したらいいかわからないです。

マーティ 初めて聴きます。ユニークな音ですよ。当時、相当未来的だったんじゃない?

――78年の日本の歌謡界は、「UFO」「サウスポー」がヒットするなどピンク・レディー全盛期。他のヒット曲はキャンディーズのラストシングル「微笑がえし」、堀内孝雄「君のひとみは10000ボルト」、沢田研二「サムライ」など。YMOの音は全く毛色が違いました

マーティ 未来的で、宇宙から来た音楽みたいな感じだったんじゃないですか。いま聴くと時代を感じるけど、当時は未知なもので、怖いほど新しかった。たぶん僕が初めてDEVO(78年デビュー)を聴いた時と同じ感じだと思います。初めてDEVOを聴いた時、怖かったんですよ。

上坂 どういう怖さですか?

マーティ 高校ぐらいでした。ずっと音楽を聴いてきて、聴いたことがない音が未来から届いたって感じでした。ニューウエーブがはやってたけど、ニューウエーブは基本的にロックです。DEVOはこのYMOの曲みたいに、どこからの影響かわからなかったんです。音楽に「世界はどうなる」的な怖さが入ってました。

上坂 DEVOを聴いたことないんですが、〇〇ぽいという表現ができないんですね。

マーティ そうです。例えば、「ピンク・プッシーキャット」(79年)を聴きましょう。今は古い音だけど、当時はびっくりしました。似てる曲がまったくないんです。あの人たちが草分けで、みんなマネしたんですよ。

上坂 どういうところにショックを受けたんですか?

マーティ 歌い方、変拍子、このシンセの音、ギターの音色が死んでる、ドラムの音もドライ。ドラムなんて全くリバーブがない。当時はレッド・ツェッペリンやヴァン・ヘイレンみたいに、ドラムは大きな音を出すのが当たり前でした。

上坂 バンドの“らしさ”を消したんですね。

マーティ そうです。ロックンロールのルーズさを完全になくして、タイトです。そして変拍子。こんな音楽をやる人、いなかったんですよ。

上坂 すごくテクノっぽいです。

マーティ まだテクノという音楽用語はアメリカにありませんでした。

上坂 そうなんですね!

☆マーティ・フリードマン 米・ワシントン出身のギタリスト。1990年から2000年までメガデスに在籍。04年から拠点を日本に移し幅広いジャンルで活躍している。「紅蓮花」などをカバーしたアルバム「TOKYO JUKEBOX3」が発売中。伝説の音楽バラエティー「ROCK FUJIYAMA」がユーチューブで復活。

☆うえさか・すみれ 1991年12月19日生まれ。神奈川県出身。上智大学外国語学部ロシア語学科卒。2012年に本格的に声優デビュー。13年にアニメ「波打際のむろみさん」の主題歌「七つの海よりキミの海」で歌手デビュー。ロシア、昭和歌謡、メタルロック、戦車、ロリータ、プロレス、ひげなど多方面の知識を持つ。最新アルバムは「NEO PROPAGANDA」(キングレコード)。

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