連載⑦ 流通最前線「ドンキ、ユニー再生の方法論とは」(上)

GMSに代わって登場したのが総合業態であるドン・キホーテだ。「ドン・キホーテはGMSの最高形態」とあるスーパーの首脳は話す

「ドン・キホーテ」を展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(PPIH)は現在、傘下に入れたユニーの総合スーパー(GMS)型店舗を「MEGAドン・キホーテ」などに業態転換し、テコ入れを図っているが、もう一つの選択肢としてユニーの総合スーパーを「ドンキ化せず」テコ入れする方法を展開し始めている。その方法論とは――。

今、GMSといわれる業態は苦境にある。イオンのショッピングセンター内にあるGMS店舗、さらにセブン&アイ・ホールディングスのイトーヨーカ堂のGMSなど多くのGMSを展開する企業の業績が振るわない。各社、GMS業態は懸命のテコ入れで収益の改善を図っているが、なかなか芳しくないのだ。GMSが主体のユニーもついに2017年にドン・キホーテホールディングス(現PPIH)の傘下に入ってテコ入れを図るという形になった。

なぜダイエーやイトーヨーカ堂、ジャスコなどとGMSを始祖とする企業のGMS業態は苦境に喘いでいるのだろうか。GMSは「何でもそろうが何もほしいモノがない」といわれて何十年もたつが、簡単にいえば「カテゴリーごとに有力専門店が登場しシェアを奪われてきたことが主因」(流通業界専門家)といわれている。

客観的にみればそうだろう。しかしGMSを苦境に追い込んだのは他業態との競争に負けたのでもなく、有力専門店が台頭したからでもない。GMS自身が隘路にはまり込んでしまったからである。それは中央集権型の組織であり中央集権的な仕入れ体制であり、本部中心の全国一律の商品政策を長く続けたからである。今でもそうした体制を改革できずに旧態依然とした組織、運営体制を捨てきれないチェーンが少なくない。

かつて流通自体が未成熟で中小商店が中心の時代にはそうした体制も有効に機能した。しかし、オーバーストア状態とまでいわれるまで店舗数が増えたなかで、そんなやり方が通用するはずもない。代わって登場したのが総合業態であるドン・キホーテだ。「ドン・キホーテはGMSの最高形態」とあるスーパーの首脳は話すが、まさにドンキは総合的な品揃え安売り中心のディスカウントストアである。

品揃え的にはGMSと変わらず家電、衣料品、雑貨、食料品とある。つまり、GMSの品揃えと何ら変わりない。それがなぜ、消費者に支持されているのか。ドン・キホーテを創業した、安田隆夫現在創業会長兼最高顧問の言葉を借りれば「小売業は地域一番でなくてはならない」という。地域一番というのはもちろん、地域の競合店に打ち勝って一番になるという意味もあるが、つまり「地域一番の品揃え、価格」ということだろう。

品揃えといっても数が多ければいいわけではない。品揃えは重要だが、地域の消費者が要求している品揃え、競合店に負けない価格だし、ドンキの場合は圧縮陳列やPOPの洪水というように、アミューズメント性を付加したことが支持されているといえるだろう。

PPIHはGMSのユニー買収後、ドン・キホーテやMEGAドン・キホーテに転換する一方でドンキ業態に転換しないユニーのGMS業態を「NewGMS」構想に基づいてテコ入れに乗り出している。ドンキの看板に付け替えずドンキ流の改革を図った店舗が4、5店と生まれている。ユニーの「アピタ」や「ピアゴ」というGMS業態では昨年11月にオープンした「アピタプラス岩倉店」(愛知県))、12月には「ラスパ御嵩店」(同)、すでにオープン後6か月を経過した「ピアゴプラス妙興寺店」(同)などがある。

次回、この業態が現在、どうなったのかみてみる。

オーバーストア状態とまでいわれるまで店舗数が増えたなかで、かつてのやり方は通用するはずもない

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