メクル第532号 旬のみかん『ぎゅ♪』 缶詰工場に潜入!

 おいしい果物や魚を、いつでも手軽においしく食べられる便利な缶詰(かんづめ)。実は長崎は、明治初期に日本で初めて缶詰を製造(せいぞう)した場所だって知ってた?
 今回は、島原市高島1丁目で缶詰製造をしている太洋食品の工場を訪(たず)ねたよ。「みかん缶」がどうやってできるのかを教えてもらったばい。

外皮をむいたばかりのみかんはほっかほか=島原市高島1丁目、太洋食品

■教えてくれた人 太洋食品専務 高山弘人さん(60)

 太洋食品では、季節ごとに加工する果物が違(ちが)うんだって。11月から5月にかけての約7カ月間が、かんきつ類の缶詰を作る時期なんだ。

(1)仕分けする
 2月の工場には、九州産の「温州みかん」が次々と運び込(こ)まれていたよ。その量なんと毎日約40トン。缶詰の大きさは家庭用から業務(ぎょうむ)用までさまざまだけど、中型の缶だと1日に8万個(こ)ほど製造することもあるそう。驚(おどろ)いたばい! みかんは大きさごとに分け、まず水洗(みずあら)いするんだよ。

(2)外皮をむく
 高温の蒸気(じょうき)を当てた後は、機械でだいだい色の外皮をむくんだ。ゆで上がらない程度(ていど)に熱を加えることで、皮がむきやすくなるんだって。機械から出てきたばかりのみかんは、まだほっかほか。外皮が付いたままだったり、傷(いた)んだりしていないか、人の目で丁寧(ていねい)にチェックしていたよ。

果肉だけになったみかんは、スタッフが丁寧に確かめるよ

(3)実に分ける
 丸いみかんは一つ一つ、実に分けるよ。どうやってバラバラにするのかなと思っていたら、水の力を利用するんだって。工場内での作業に使われている大量の水は「地下からくみ上げているんです」と専務(せんむ)の高山弘人(たかやまひろと)さん(60)。豊富(ほうふ)な地下水に恵(めぐ)まれている島原の地。以前はみかんもたくさん作られていたそうだよ。

(4)内皮を除(のぞ)く
 まず、食用の酸性溶液(さんせいようえき)で果肉周りにある薄(うす)い内皮を軟(やわ)らかくした後、水で洗(せん)浄(じょう)。次にアルカリ溶液(ようえき)に漬(つ)けてしっかりと皮を溶(と)かし、再(ふたた)び水洗いするんだよ。皮が全てむかれて実の部分だけになったみかんは、つやつやしてとってもきれい。もう食べちゃいたいっ!

(5)選別する
 次はみかんの実をMやLなどのサイズ別に分ける工程(こうてい)だよ。形が整った商品を出荷するために、機械を使うだけではなく、白いすじや実割(みわ)れがないか最後まで丁寧に見ることを大事にしていたよ。実が崩(くず)れたものや規格外(きかくがい)のものは、つぶつぶジュースなどに使われるんだって。

(6)缶に詰(つ)める
 缶に実を詰(つ)めたら計量して、砂糖(さとう)や水などを配合したシロップを入れる。甘(あま)~いシロップに出合ったみかんは、きっとおいしくなるんだろうなぁ…。この後は密閉(みっぺい)して、真空状態(じょうたい)にするんだよ。みかんは産地や収穫(しゅうかく)の時期で味が異(こと)なるそう。果実の甘さに合わせてシロップを調整することで、味や品質(ひんしつ)を均一(きんいつ)に保(たも)っているんだって。缶には自社ブランドだという「金太洋」の文字が光っていたよ。

缶に詰められていく つやつやのみかん

(7)殺菌(さっきん)する
 長期間の保存(ほぞん)に耐(た)えなければならない缶詰。熱湯に入れた後、冷却(れいきゃく)してしっかりと殺菌(さっきん)していたよ。おいしく食べられる期間の目安である「賞味期限(きげん)」は、みかん缶の場合、製造日から3年間に設定(せってい)しているんだって。ふむふむ、勉強になるばい。

安心安全な缶詰作りのために欠かせない検査

(8)検査(けんさ)する
 工場内の「品質保証(ひんしつほしょう)部」というところでは、専門(せんもん)スタッフが缶詰の内容(ないよう)量や甘さを示(しめ)す糖度(とうど)などをチェック。他にもエックス線を当てて異物混入(いぶつこんにゅう)がないか確(たし)かめたり、日本農林規格(きかく)(JAS(ジャス))の認定(にんてい)を受けたりと、まだ検査が続くんだ。完成した缶詰を出荷するまでには2週間ほどかかるとげな。「その間に味もなじむし、安心安全な缶詰を届(とど)けるためには必要な時間なんです」と、部長の松尾修一(まつおしゅういち)さん(56)が教えてくれたよ。
 最終確認が終わったら、いよいよ出荷。県内の学校給食にも使われるというから、ぼくたちも口にしとるかもね♪

© 株式会社長崎新聞社