【渡辺薫&柏木集保「私たちはこう見た」・金鯱賞】
渡辺 最大の注目点は3冠牝馬デアリングタクトが4歳始動戦でどんな走りを見せるかだった。快勝スタートなら盛り上がることは間違いない一方で、戦前から不穏なムードも漂っていた。渋った馬場が波乱係数を高めたことは間違いない。
柏木 レースの立ち位置がそもそも難しいですね。大阪杯がGⅠに昇格した17年以降、金鯱賞はその前哨戦の形になっています。そのうち3回は有馬記念以来の実戦だった組が勝ちましたが、結果的に力が上だったにすぎません。
渡辺 大目標はあくまで大阪杯、もしくは香港遠征となれば、実績上位馬ほどメイチの仕上げは考えにくいな。
柏木 デアリングタクトとグローリーヴェイズはジャパンカップ以来でした。レベルが高く消耗も激しかったレースだけに嫌な気はしていたんですが…。“ローテーションの落とし穴”にはまったと言えるでしょう。
渡辺 加えて想定外の事態はキセキが逃げなかったこと。休み明けの実績馬が重馬場で切れがそがれたうえに、楽にハナを切れたことで最低人気のギベオンが押し切ってしまった。金鯱賞は過去2年が6、4着善戦。今回の舞台では18年のGⅢ中日新聞杯を1分59秒3で勝利しているが、そこから11戦も馬券に絡んでないのだから、さすがに印は回らない。
柏木 GⅠ経由組と違って“ここが大目標”と言えますし、必死さも違いましたか。後から見返せば前走の白富士Sが1着のポタジェから0秒4差。斤量は59キロから3キロ減の56キロだし、1キロ増のポタジェよりこちらを警戒すべきでした。
渡辺 負けはしたがデアリングタクトも最後は勢い良く伸びてきたように“らしさ”は見せてくれた。始動戦としては及第点は与えられるだろう。一方、グローリーヴェイズはジャパンカップに続いて0秒1遅れた。ポタジェとの3着争いで競り負けた点は不満が残る。
柏木 仕上がりに関しては2頭とも“不満はないけど…”といったレベルでしたから評価を下げる必要はないでしょう。グローリーヴェイズはこの距離2回目。ベストの条件で見直したいです。
渡辺 案外なパフォーマンスだったのが2番手グループの面々だ。ブラヴァスはまったくいいところがなかったし、サトノフラッグも粘りが見られなかった。
柏木 ギベオンが逃げ切った展開を考慮すると、楽なペースで止まってしまった先行勢はいただけませんね。