姓を変え喪失感 仕事、結婚、出産…迫られる選択 長崎の会社員 清明日香さん

駆け寄るわが子に手を伸ばす清さん。自分らしく生きることのできる社会を願っている=長崎市常盤町、長崎水辺の森公園

 長崎市内の海沿いの公園。夫、4歳の長男とピクニックを楽しんでいるのは同市内の会社員、清(せい)明日香さん(41)。これまで、仕事、家事、出産、育児などさまざまな場面で、女性ならではの選択を迫られてきたという。8日の国際女性デーに合わせ、率直な思いを聞いた。

 小学生の頃から周りの空気を読むのに必死で、正直苦しかった。中学3年の頃、教師がこう言ってくれた。「男らしく、女らしくではなく、自分らしく生きて」。その言葉が心に染みた。
 県外の大学に進学後、長崎に戻り、22歳で就職。33歳の時、5歳上の夫と結婚し、一つの悩みが生まれた。「名字、どうしよう」。夫婦別姓が制度化されていない日本では、どちらかが姓を変えなければならない。「清」の名字には愛着があり、できれば変えたくない。でも妻が名字を変えるのが当たり前の世の中。「夫に迷惑を掛けられない。私が変えて丸く収まるなら」。そう考え、夫の姓「中村」を選んだ。
 「自分が自分でなくなったみたい」。喪失感があったため、公的な手続きなどの他は旧姓を使うことに。しかし「清」を名乗ると「なぜ」と思う相手は多く、その都度、旧姓を名乗っている理由を説明しなければならなくなった。
 夫と家事を分担しながら仕事を続けた。妊娠すると、耳にしていた「妊娠は病気じゃない」という言葉を思い出した。すぐに職場の上司に報告。「妊娠しましたが、頑張りますので」。会社に迷惑を掛けてはいけないと無意識に思っていた。
 妊娠8カ月の定期健診で切迫早産の診断。でも頭の中は「早く仕事の引き継ぎをしないと」。医師から「仕事はどうにでもなる。安静にして」と説得されて、ようやくわれに返った。
 約2年間、休暇を取らせてもらった。一方、夫は3日間だけ。「もう少し休みを取ってもらえないかな」と伝えたが、夫は取らなかった。収入減となる可能性に加え、収入自体が男性を価値付けるという観念が関係しているかも、と思う。
 今は、長男を保育園に預けながら共働きを続ける日々だ。「息子が生きる未来が、性別に関係なく自分らしくいれたらいい。そのために私にできることは何でもします」。清さんはわが子をぎゅっと抱き締めた。

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