騰落率2000%超えの銘柄も、コロナショックから1年 激動の株価値動きを振り返る

世界のマーケットが揺らいだコロナショックから1年。ワクチン接種等、新型コロナウイルスへの対策は進んでいるものの、経済活動の全面的な再開には至っていません。一方で、株式市場では各国の中央銀行による大規模な金融緩和によりコロナ前より高い水準で株価指数は推移しています。

この1年間の日本の株式市場の値動きを振り返ってみましょう。


1年で日本の主要指数はどう動いた?

新型コロナウイルスの流行を契機に投資にまつわる報道も増え、個人投資家層の拡大もしつつありますが、日本の株価指数はどのように動いたのでしょうか。

日経平均株価は実体経済と株価の乖離が叫ばれる中でも上昇を続け、一時バブル以来の3万円を回復したほか、個人投資家に人気のマザーズ上場の銘柄にも買いが集まりました。

また日経平均株価やTOPIXは今年に入りさらに上げ足を早めています。一時期は安定した成長が見込まれる大型株が主導で上昇し、TOPIXに対し日経平均株価の方が上昇する場面もありました。

しかしTOPIXは3月に入り再び高値圏内に回復するまで上昇しています。新型コロナウイルスの状況が変わっていく中で、市場で選ばれる銘柄にも変化が出てきています。

個人投資家で盛り上がったマザーズ市場

では、今回は一時安値から2.5倍以上上昇したマザーズ市場に注目してみましょう。マザーズ市場には新興企業が多く上場し、約35%が情報・通信業を占めているため、近年の業界トレンドも追い風に高い成長性が期待されています。また個人投資家が売買代金に占める割合の半数以上となり、相場の主な担い手であることも特徴と言えます。

月間騰落率と売買代金の関係を見てみると、昨年の春頃、コロナショックから急速に回復した場面で大きく売買代金が膨らみ、指数が高値付近で推移していた10月には例年より2倍程度の売買が行われていました。このことからも、2020年は多くの個人投資家が売買を繰り広げ、市場を盛り上げていたことがわかります。

市場を牽引するマザーズの時価総額上位6銘柄の昨年の値動きを見ても、大きな値動きがあったことがわかります。

特筆すべきはBASE(4477)です。コロナショック時につけた安値774円からなんと高値では17,240円をつけており、約22倍の上昇となりました。テンバガーならぬダブルテンバガーを記録しています。

BASEはEコマースプラットフォーム「BASE」や、オンライン決済サービス「PAY.JP」などの事業を展開しており、新型コロナウイルスの蔓延により自粛が余儀なくされる中でのEC需要を見込んだ株価の反応であったと言えます。

たしかにBASE事業のGMVは前年比で+121.8%となり、売上高も前年比で+115.3%の成長を記録しています。一方で純利益の額は6億円程度であり、収益性を表すPERは一時600倍を超える水準まで高騰していました。

理論的に考えると、投資資金を回収するのに600年を要することになります。現在では高値から40%ほど調整して推移しているものの、かなり将来の期待を織り込んだ、やや行き過ぎた株価変動であったと言えるでしょう。

今後はバブル終了へ警戒?それとも押し目買いが有効?

これまでの1年間は、以前よりさらに増した中央銀行の金融緩和を背景としたいわゆる金融相場による株価上昇でした。株式バブルなのではないかと声もあがる中で、ここからは金融相場から業績相場への移行が課題になってきます。

ここ数ヶ月は経済再開への期待から米国の長期金利が上昇し、低金利によって説明がされていたハイバリュエーションのグロース株を中心に売りにおされ、米国を中心として世界的にマーケットが乱れる場面がありました。

一方で金利上昇も一服し、相場も金利上昇への警戒感を持ちながらも一時の下落を取り戻しています。いよいよバブルの終焉かと思いきや軽い調整で済み、再び上昇へと転じていきそうな気配がしてきています。

そうなると、今後は想定の通り業績相場に移行することができるのかが焦点となるでしょう。とりわけ企業の業績が安定するには経済正常化が不可欠であり、その道筋を大きく左右するのはワクチンの接種状況ではないでしょうか。

すでに各国でワクチン接種のスピードに差は出てきていますが、それに伴い感染状況にも差が出てきています。ワクチン接種が進むアメリカは感染者の抑制に成功していますが、新興国ブラジルをはじめ感染者数の増加が止まらない国もあります。

加えて、3月に入り英アストラゼネカのワクチンに副作用の恐れが懸念され、欧州を中心に接種が見送られ始める事態にもなっています。昨年のコロナショックも米国ではなく欧州での感染拡大が引き金となったため、ワクチン接種の中断による欧州各国の感染者数の変化、政策動向には注目が集まります。

また日本においても、現状各国と比べるとワクチン接種スピードが極めて遅い状況になっています。ワクチンに期待できないとなると、目覚ましい感染動向の改善には期待ができない上、景気の観点でも消費の低迷など厳しい状況が続いています。

またオリンピックや選挙などの政治動向も動きが予想されるため、特に日本株投資の観点からは例年は上昇の傾向がある4月に入るものの、警戒感は強めておいても良いかもしれません。

業績相場へ転じ、さらに株価が上昇するかどうかは、やはり新型コロナウイルスの感染動向に安心できるようになるかがカギではないでしょうか。

ショック時はどう立ち振る舞う?

コロナショックからの回復局面では、指数が大きく上昇したこともありますが、個別で見ても目覚ましく上昇した銘柄が多く見られました。一方で下落時に狼狽売りをしてしまい、その後の上昇にも乗れず悶々としてしまった方も少なくないかもしれません。ショック時にはどのように振る舞うのがよいのでしょうか。

もちろん、短期で取引をしている場合は一定の水準まで達した段階で損切等を行うことは非常に重要です。しかし長期の目線でつみたて等をしている場合は、株価の値動きに応じてポジションの取り崩し等は行わなくていいかもしれません。

長期の投資は目先の利益というよりは将来の備え、何らかの目的のために行っているものであり、短期の値動きで決断が揺らいでしまっては本来の目的が達成されなくなってしまいます。

実際、結果論であるものの株価指数は下落前の水準よりも高く推移しているため、株価が下がったタイミングでも積立を続けていた場合は取得単価の低減にもつながり利益の上乗せとなった経験をされた方もたくさんいるでしょう。

日々の値動きも楽しみつつ、長期的な視点とのバランスを保ちながら投資に向き合ってみてはいかがでしょうか。

<文・Finatextホールディングス アナリスト 菅原良介>

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