英政府表明に警戒 長大レクナ会見 核軍縮“潮流”に逆行

オンラインで記者会見し、英政府が発表した核弾頭保有数の上限引き上げについて意見を述べる鈴木副センター長

 長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)は19日、オンラインで記者会見を開いた。鈴木達治郎副センター長は、英政府が核弾頭保有数の上限を引き上げると表明したことについて、1月の核兵器禁止条約発効など世界の核軍縮の潮流に「逆行している」と警戒感を示した。
 英政府は16日発表した欧州連合(EU)離脱後の外交・安全保障に関する方針の中に、核弾頭の上限を180発から260発に引き上げることを盛り込んだ。
 英国は2010年、核弾頭の上限を225発から20年代半ばまでに180発とすると決めていた。今回の引き上げは核戦力を増強する中国やロシアへの対抗が狙いとみられる。鈴木氏は、詳細は今後調査する必要があるとし「(世界は英国の動向を)緊張感を持って見るべきだ」と述べた。
 吉田文彦センター長は、2月に5年間の延長が決まった米国とロシアの新戦略兵器削減条約(新START)に触れ、今後さらに英国やフランスを巻き込んだ「新たな核軍縮の枠組みができる可能性もある」と指摘した。英国の核弾頭の上限引き上げは「規制前に増やそうという考えもあるのではないか」と述べた。
 記者会見は、レクナが同日、無料電子書籍「第三の核時代-破滅リスクからの脱却」を出版したのに合わせて開いた。書籍では、人工知能(AI)が核兵器システムに与える脅威に関する報告や、核軍縮に向けて核保有国と「核の傘」に依存する国の対話を促進する国際組織の設立を提言するなどしている。

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