女性国会議員悩ます「女のくせに」

政府目標「不十分」が7割

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 国連が定めた「国際女性デー」(3月8日)に合わせて共同通信は全女性国会議員にアンケートを実施した。政府が掲げる「国政選挙の女性候補者割合を2025年までに35%とする」目標に関し、回答した61人のうち72%が「不十分」「どちらかといえば不十分」と考えていることが分かった。「政治は男性の仕事」「女のくせに」―。心ない言葉を投げかけられ、固定観念の壁に苦悩する姿が浮かんだ。(共同通信=三田村俊哉、高砂しおみ)

 

 ※女性候補者割合の目標は、政府が昨年末に策定した5年間の女性政策に関する「第5次男女共同参画基本計画」に盛り込まれた。共同通信は1月中旬~2月中旬、衆参両院の全女性国会議員101人を対象に調査した。

 ▽世界166位

 どうやって女性議員を増やすかの方策(複数回答)を聞いたところ、候補者の一定比率を女性にする「クオータ制(人数割当制)導入」が70%と突出して多かった。

 実際の国政選挙の候補者に占める女性の割合は低迷が続き、17年の衆院選は18%。当選者はさらに少なく、全衆院議員のうち女性は10%しかいない。各国の議会でつくる「列国議会同盟」によると、日本のこの数字は世界で166位と極めて低い。25年までに今年の衆院選をはじめ国政選挙は少なくとも4回ある。女性をどう増やしていくのか。各党の取り組みが問われることになる。

 

 ▽増やす方策

 女性議員を増やす方策では、クオータ制に続いて「政党による選挙費用などの支援」が41%、「比例名簿の上位に女性候補を登載」が39%、「女性候補の比率が高い政党に政党交付金を優遇」が34%。女性候補者数の目標設定を政党の努力義務としている「政治分野の男女共同参画推進法」を改正して罰則付きで義務付けることは、16%にとどまった。

 政府目標を不十分とした理由では「人口の男女比から見ても半分は女性候補者を立てることが自然」(自民・野田聖子氏)や「50%にすべきだ」(立憲民主・辻元清美氏)との意見が多く聞かれた。「多様な声を国政に反映させるためには不十分」(共産・本村伸子氏)との指摘もあった。

 これに対して「十分」「どちらかといえば十分」との回答は合わせて26%。「女性国会議員、候補者の割合が低い現状を踏まえれば適切」(自民・高市早苗氏)、目標の35%は「(17年の)衆院選の女性候補者のほぼ倍に当たり、現実的な目標としては妥当」(公明・伊藤孝江氏)など「条件付き」での支持が多い。

 ▽政治は男性のもの?

 女性が立候補や政治活動を行うには男性の場合より厚い壁が立ちはだかる。自身の経験を踏まえて尋ねたところ(複数回答)、「政治は男性のもの」など根強い固定観念が66%、「家庭・子育てとの両立」が61%で目立った。セクハラ被害は34%、女性差別は33%、家族の理解は31%だった。

 政府目標の実現可能性については「達成できる」が26%なのに対し「困難」は倍以上の66%に上った。残りは「どちらとも言えない」や無回答。

 達成困難とする理由には「全国的に選挙区支部長の席がほぼ埋まっている。男性であることを理由に現候補者を女性に差し替えるのは困難」(自民・加藤鮎子氏)、「国会が女性で志のある人にとって行きたい場所になっていない」(公明・高瀬弘美氏)、「クオータ制を設けていないから」(立民・早稲田夕季氏)などが挙がった。

 達成できるとした理由を見ると、「実現可能となるよう各党が努力するから。自民党の女性議員も実現に向け努力している」(自民・永岡桂子)、「本気で取り組みさえすれば可能」(立民・岡本章子氏)など、前向きな取り組みを前提としたものが多い。

市民団体(左側)から女性議員増を求める署名を受け取る自民党の野田聖子幹事長代行(中央)ら=2020年10月、東京・永田町の党本部

 ▽「あるべき像」に苦悩

 アンケートには、政治参加で感じた「壁」についての声が相次いだ。コメントをテーマごとにまとめた。

 【固定観念】

 「政治は男性の仕事」という意識の壁(自民・野田聖子氏)

 女性に何ができるのかという視線を感じる(国民民主・矢田稚子氏)

 男性議員は妻子が地元にいてもそれが当たり前と思われるが、女性議員が子どもを地元に残せば「子どもを捨てて仕事をしている」となる(無所属・寺田静氏)

 小さな子どもを抱えての候補者活動に「子どもがかわいそう」と党内や女性からも言われた。それがお父さんなら言われない、というのがおかしい(共産・高橋千鶴子氏)

 私は独身だが、そのために、女性から「子育てをしていないから女性の気持ちはわからない」と言われた(自民・本田顕子氏)

 【家庭との両立】

 出産した議員にとって選挙活動や地元と国会を行き来する議員活動は過酷(公明・古屋範子氏)

 子、親の病気、介護で休めない(共産・倉林明子氏)

 飲酒を含めた夜の会食が政治活動の中心となっており子育てや介護中の女性が参加しづらい(コロナ禍以前)(立民・田島麻衣子氏)

 出産・育児の期間はどうしても選挙活動が手薄になる。活動しなければ有権者との接点が減り、そのまま選挙結果に響く(自民・加藤鮎子氏)

 【セクハラ、差別】

 子育て支援について質問した際、「自分が産め」とやじがあった。「女のくせに」という言葉は当たり前のようにぶつけられた(立民・金子恵美氏)

 若い頃は「○○の愛人」といった事実ではない下品な怪文書を選挙区内で配布され、精神的につらかった(自民・高市早苗氏)

 マスコミの男女ネタの捏造によるセクハラ報道(自民・佐藤ゆかり氏)

 票ハラ=投票をちらつかせたハラスメント=などの行為が見られる(立民・田島麻衣子氏)

 障害者の女性は、そもそも大人として見られていない(れいわ新選組・木村英子氏)

 【家族の理解】

 知事選挙の立候補の時、特に配偶者の家族から「政治に出るなら離縁」と言われ、結果として離婚することになった(無所属・嘉田由紀子氏)

 【その他】

 厳しい選挙区やワンポイントの「捨て玉」に女性を充てることが多いと感じる(立民・池田真紀氏)

 政治活動のスタイルが体力的にもハードでホルモンバランスなどを崩しやすい(立民・岸真紀子氏)

 女性の立候補には暗黙の年齢制限があると言われた。年齢で女性の可能性を判断する社会自体が壁であると感じる(日本維新の会・石井苗子氏)

 男性の意識を変えるだけでなく、女性自身の意識を変える必要がある(立民・菊田真紀子氏)

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