春のGⅠシリーズが始まる直前の日本時間27日深夜、UAE・ドバイのメイダン競馬場で「ドバイワールドカップデー」が開催される。日本からは12頭が6つの競走に出走するが、最も注目を集めているのは昨年の夏冬グランプリを制したクロノジェネシスと、同期のオークス馬ラヴズオンリーユーが激突するGⅠドバイシーマクラシックだろう。ここではラヴズオンリーユー=矢作芳人調教師(60)の単独インタビューをお届けする。
――前走の京都記念を振り返って
矢作 やっと状態が良くなった手応えがあったし、京都記念にしては軽いメンバーだったので負けられないと考えていた。終わったわけじゃない。状態が戻らなかっただけというところを見せられた。うれしかったね。
――オークスを10とすれば…という表現を常に使ってきた。現在は
矢作 9は超えてきたと思う。京都記念よりも良くなるかと言えば、検疫や輸送のことまで考えると、それ以上を望むのは難しいかもしれない。だが、硬さがないので状態は維持できると思っている。この馬は脚元がどうこうしたことは一度もなく、常に筋肉的な要素が問題だった。昨年はドバイに向けて仕上げていたのに開催が中止になり、そこで緩めてしまったのにもかかわらず、ヴィクトリアマイルを無理に使った。それが尾を引いてしまったんだよね。
――京都記念は好位抜け出しの競馬。直線一気のオークスとは違った
矢作 みんながそれを言うんだけど、実際に後ろから行ったのはオークスぐらい。スタートのいい馬だし、一昨年のエリザベス女王杯(3着)はハナに行くんじゃないかと思うくらいだった。(全兄の)リアルスティール(注)にも同じようなことが言えるけど、この血統は走るし、素晴らしい。ただ、究極の切れ味という点でディープインパクト産駒らしくないところがある。個人的には好位づけの競馬のほうが合うと思っているんだ。そして、その特徴がドバイの芝には合う。
――それがリアルスティールを何度もドバイ遠征させた理由であり、妹を参戦させる理由
矢作 昨年も参戦しようと思っていたわけだし、これまでの話とつながるよね。ドバイは馬場があまり悪くなることはないだろうし、平坦で左回りの2410メートルはベストではないかな。適性が遠征をする一番の理由でオーナーの希望が2番目。コントレイルがいることが3番目になる。コントレイルとはぶつけたくない…それがオーナーの希望にもあったからね。
――同期のライバルであるクロノジェネシスも出走する
矢作 現実として3歳時は負かしていたわけだけど、彼女は昨年大活躍した。どちらかと言えば、あちらのほうにライバル心があるということじゃないかな。
――昨年のクロノジェネシスは、自身が管理したリスグラシュー的な成長を見せました
矢作 本当に素晴らしいパフォーマンスだった。素直に強かったと思う。ただ、競馬に携わる者なら誰でもそうだろうけど、自分も管理馬のことを信じているからね。雨が降ったら強いけど、パンパンの良馬場ならクロノジェネシスよりも上じゃないかな。そう思っているので遠征する。
――海外志向の強いトレーナーで知られる一人として、コロナの影響を強く受けた昨年をどう感じたか
矢作 仕方のない一年ではあった。ただ、今回の遠征に“昨年の借りを返しに行く”という気持ちがあるのも事実。リアルスティールもそうだったしね。ドバイターフを勝った翌年も遠征したけど、鼻出血を発症して出走できなかった。その背景があったからこそ、3回目の遠征(3着)をしたんだよ。今回もそのイメージに近い。あえてテーマをつけるなら「リベンジ」かな。昨年の分も、と思っています。
※注 14年デビューで15年の3冠レースは2、4、2着。翌16年のドバイターフ(鞍上ムーア)でGⅠ初制覇。18年のドバイターフ(同バルザローナ)は3着に敗れた。