【高校発みやざきSDGs】-9-高鍋農業高(下) 伝統野菜や文化発見

生徒たちはふるさとへの想いや提言をまとめるため、出身町村の地域創生担当者と意見交換を行う

 「私の故郷・西米良村は『千人が笑う村』をキャッチフレーズとした宮崎県でも一番人口の少ない村。村の96%を山林が占め、コンビニなどもなく不便な所ですが、なぜか好きです」と話す男子高校生。

 標高800メートルにある彼の実家は、冷涼な気候を生かした高冷地野菜の夏秋のカラーピーマンやホオズキを栽培している。西米良村には農家同士が互いに助け合う「てごり文化」がある。彼はこの文化が根付く地域で実家の農業を継ぎたいという夢を持ち、本校に入学した。

 本校にはこのような生徒を含め、農業の担い手不足、高齢化、産業の衰退といった大きな課題を抱える中山間地域出身の生徒が在籍し、寮生活を送りながら日々学習に励んでいる。

 本校は専門学習に加え、キャリア学習の一環として「むら創生学」に取り組む。地域資源の活用や魅力発見につながる講演会や視察研修を通して、地域の伝統野菜や文化などを再発見したり、郷土への理解と関心を深めたりしている。また農畜産物を生産・維持する担い手が足りていない現状も学習。故郷への想(おも)いや提言をまとめ、出身町村の担当者と意見交換する。ある生徒は、椎葉村特産のシイタケと本校産チーズのコラボなど特産品を使った商品の開発と提供に取り組んだ。

 生徒たちは将来、出身地域に帰り、農業や産業に関わることで、地域資源を守り、生かす人材として、故郷の役に立ちたいとの気持ちを新たにしている。今後も地域社会の活力ある未来を創造できる人材を育成していきたい。(主幹教諭・立野秀行)=日曜日掲載=

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