また一つ消える昭和の風情 横浜・緑区最後の銭湯が閉店 コロナ禍で客激減

店じまいを前にした無料開放日に中山浴場へメッセージを贈ろうと呼び掛ける画家の松井さん

 昭和の風情を残した景色がまた一つ姿を消す。横浜市緑区中山4丁目の銭湯「中山浴場」が21日で店じまいした。

 今年で開業68年。建物の老朽化にコロナ禍による客の減少が追い打ちをかけた。

 ただ、壁に描かれた赤富士は銭湯絵師による貴重な風景画。その文化的価値に気付いた女性画家は、絵の魅力を語るメッセージを浴場に贈ろうと呼び掛けている。

 「大きな湯船につかり隣り合わせの人とたわいない話をした。地域の生活文化がなくなった」

 時折利用したという近所の大谷浩之介さん(42)はさびしそうに話した。

 JR横浜線の中山駅から徒歩5分ほどの場所にある中山浴場は、1953年の開業。当時田畑が広がっていた周囲は現在、住宅地に変容した。まきで湯を沸かすため煙への苦情もあった。店主の鈴木正信さん(77)は往時を振り返りながらも、「客はコロナ禍以前の4分の1になり、もう限界」と苦境を語る。

 20、21日は感謝の気持ちを込めて無料開放し、約30人が開店前から並んだ。

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