コロナ禍で乗客減の高速バスで、県内各地から新潟伊勢丹へ商品を運送する取り組みが開始

高速バスから商品を積み下ろす新潟三越伊勢丹職員

株式会社新潟三越伊勢丹(新潟市中央区)と新潟県内高速バスネットワーク協議会は25日から、コロナ禍により利用者が減少した高速バスを利用する商品運送の取り組みを開始した。高速バスを運送に利用する事で各バス会社の収支を増やすと同時に、配送のコスト低減や高速化など、生産者と店舗にもメリットを生み出す新たなシステムの構築が期待される。

2020年の夏以降、新潟県内高速バスネットワーク協議会加盟の県内バス事業者全体での高速バス利用者数は、前年同時期比で4割減となり、収支の悪化が深刻な問題となっている。今回の事業では、利用者減により生まれた荷台のスペースを有効活用するもので、今後、乗客数に左右されない新たな収入源としての展開を狙うという。

今回の取り組みで運送されるのは、新潟伊勢丹によるオリジナルブランド「NIIGATA 越品」の商品。県内の生産者が、対象高速バス経路のバス停まで商品を運ぶと、高速バスで新潟伊勢丹まで配送される。配送料金は移動距離に関わらず定額であるが、通常の宅配と比較して小口での配達に適した料金設定がされているため、作られて間もない商品を必要な数量だけ配達することが可能で、生産者にとってはコストの削減、小売店にとっては鮮度の高い製品の提供や在庫管理の最適化などのメリットがある。

2020年の10月から11月にかけて、新潟三越伊勢丹から新潟県内高速バスネットワーク協議会へ提案され、運用法が協議されてきた。高速バスによる貨客混載は県内初めてとなるが、路線通りに走り定刻通りに到着することが求められる公共交通機関は、こうした取り組みに参加しづらい面があると新潟交通の担当者は語る。今回新潟伊勢丹は、終点である新潟駅からバスの待機場までの区間に存在していることから、取り組みが可能となっているようだ。

運ばれてきた商品は間も無く1階「NIIGATA 越品」コーナーに陳列された

25日9時45分に上越市栄町を出発したバスは、農園いちごの花言葉やガラス工房falajなどから商品を受け取りながら13時過ぎに新潟伊勢丹へ到着。荷下ろしされた各商品は即座に1階「NIIGATA 越品」コーナーに陳列された。人気の食料品などは完売となる可能性が高いため、注文した品が翌日には配送される今回のシステムは売り上げにも大きく寄与することは間違いない。

株式会社新潟三越伊勢丹の髙橋芳明総合政策部長は「今回は上越の商品のみだが、今後は長岡などより広い範囲に広げ、同時に朝取れ野菜を毎日その日のうちにお客様へ提供するなど、バリエーションの面でも拡充させたい。すでに、何社かの生産者さんには声をかけている」と話す。

運送コストの関係から小売は大量発注が基本となってきたが、地場産品のような少数生産のプロダクトとの相性や、人口の変化へ合わせたシステムの改善、SDGsのような思想などを考えた場合は転換が求められていくだろう。今回の取り組みが転換の新しい一手となるか注目だ。

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