「意外と面白そう」なオリックス、優勝候補本命は… 元鷹・摂津正氏がパを占う

オリックス・山本由伸、ソフトバンク・柳田悠岐、楽天・田中将大(左から)【写真:荒川祐史、藤浦一都】

古巣のソフトバンクがV本命「とにかく選手層が厚い。磐石かなと思います」

プロ野球は3月26日に2021年のペナントレースが開幕を迎える。新型コロナウイルス感染症の影響による時短要請のため、今季は延長戦は行われず、9回打ち切り制となるなど、昨季に続き、コロナ禍の中で行われるシーズンとなる。

そんな今季を、ソフトバンクで5年連続2桁勝利をマークするなど輝かしい実績を残し、2018年に現役を引退した野球解説者の摂津正氏が展望。ソフトバンクが2年連続のリーグ優勝を目指す今季のパ・リーグを占ってもらった。

摂津氏が今季のパ・リーグで優勝候補の本命に推すのは、やはり古巣のソフトバンクだという。昨季3年ぶりにパ・リーグを制し、4年連続の日本一となった常勝軍団。今季もその強さに変わりは感じないようで「とにかく選手層が厚い。特に投手は先発、中継ぎと余っているくらいですから。シーズンに入って先発が足りなくなるとかはあるかもしれないが、そこには千賀や東浜が戻ってくる。磐石かなと思います」と言う。

昨季からムーアや内川(ヤクルト)らが抜けたものの、摂津氏は「戦力は変わっていないですね」。まだ来日できていないものの、コリン・レイ投手と前日本ハムのニック・マルティネス投手を補強した。「ムーアが抜けて戦力ダウンかな、と思いつつも、前日本ハムのマルティネスを獲得した。それで足りない部分は埋められたのではないでしょうか」と分析する。

ムーアとマルティネスには差があるようにも感じるが、摂津氏は「マルティネスが日本に来て1年目のような活躍ができれば、結構勝てるんじゃないか、という気がしています。マルティネスはいい投手です。最初に来日した時にボール見て、これは15勝くらい勝つんじゃないかと予想していたくらいです。怪我があって落ちているところがあるとはいえ、勝てる投手だと思います」と見ており「柳田が長期離脱をしなければ安泰だと思います」と優勝候補の筆頭に挙げた。

「ホークスに太刀打ちできそう」と摂津氏が2位に予想したのは…

「ホークスに太刀打ちできそうなのは楽天」と、石井一久監督が就任し、田中将大投手が復帰した楽天は2位予想に。「マー君が帰ってきたのは大きいけど、それだけじゃなくて、先発があれだけ揃っている」と、田中将の復帰だけでなく、則本昂大投手、涌井秀章投手、岸孝之投手、ドラ1ルーキーの早川隆久投手が顔を揃える先発ローテの充実ぶりを根拠に挙げる。

即戦力として期待される早川は「結構やるんじゃないかと予想しています。オープン戦では打たれてもいますが、ボールを見ても、相手のデータとかプロ野球のレベルが分かって馴染めれば、勝てると思います」と活躍を予想。1年目からセットアッパーとして大活躍した摂津氏は「まずはルーキーはどこが打たれて、どれが通用する、とかの整理ができるようになる必要がある。それができれば、左で150キロ投げられるんだから、なかなか打てないと思いますよ」という。

昨季はパ・リーグトップの得点力を誇った楽天。ステフェン・ロメロ外野手がオリックスへと移籍し、新外国人も来日できていない状況だが、摂津氏は「外国人は来てないですけど、それは他球団も同じ。それに実際に来たところで、助っ人はどこまで活躍するか分からないですから。楽天には、まず浅村という軸がある。投手が揃っていて、軸になるバッターがいるという意味ではホークスと同じくらいの戦力があると思います」と浅村栄斗内野手の存在の大きさを指摘した。

今季のパ・リーグはこのソフトバンクと楽天の2球団の戦力層が抜けていると分析する摂津氏。昨季、ソフトバンクと優勝を争ったロッテは3位予想。「ロッテは投手力はいいけど、そこまでは、という感じがしますね。ホークスとの相性の良さはありますが、打線に長距離打者がいない」と、どうしても打線に課題が残ると指摘する。

ロッテは今季、若い山口航輝外野手が頭角を現し始めている。摂津氏にとっては明桜高校(かつての秋田経法大附属)の後輩にあたるが、「後輩なんで頑張って欲しいですけど、最初からそこまでの成績を残すというのは厳しいんじゃないかな、と思います。そんなにプロの世界は甘くない」と苦戦を予想。「安田の調子も良くなさそうだし、藤原とともにシーズンを通して成長していったら面白いかな、とは思います」とし、ソフトバンクや楽天に匹敵するには、山口や安田尚憲内野手、藤原恭大外野手ら若手の急成長が必要とみる。

9回打ち切りは「ホークスにとって絶対にいい」「投手力のいいところが上位に」

Bクラスは4位に西武、5位にオリックス、6位に日本ハムを並べた。「西武は攻撃力が戻ってこないと厳しいですよね。主力もやや足りないかな、という印象です。ただ、西武は野手が育ってくる球団。誰かが出てくれば変わるかもしれない。投手陣もAクラスに予想した3球団と比べると薄いかなと思います」と、2018年や2019年のような圧倒的な攻撃力が戻ってこなければ、V奪還は難しいという。

“ダークホース”的に見ているのは、5位に予想したオリックス。「意外と面白そうなのがオリックスですね」と摂津氏は語る。山本由伸投手、山岡泰輔投手、田嶋大樹投手ら柱になる先発投手がおり「先発がしっかりしているし、後ろもある程度のメンバーはいる」と投手力は他球団とも遜色ないと分析する。

ただ、その一方でやはり打線の薄さは否めない。「吉田正尚頼りですよね。吉田正の他に、もうちょっと出塁率、打率を残せるバッターが出てきたら、なんとかこうロースコアで勝っていけるのかもしれないけどね」と新戦力の台頭が不可欠だという。その候補として太田椋内野手や紅林弘太郎内野手がスタメンに入ってきそうだが、「若い子が出て来てるみたいですけど、それもそんなに甘くないでしょう。プロはそんなに簡単じゃないですよ」という。ただ、ロッテ、西武、オリックスの間の差は感じず「正直、そこは難しいです。ちょっとしたことで入れ替わると思います」とも語った。

最下位は日本ハム。有原航平投手の流出が大きな痛手だと指摘し「やっぱり有原が抜けて厳しいんじゃないでしょうか。柱となる先発投手がいない。打線は中田をはじめ、西川、近藤、大田といて、まずまずだとは思いますけど、投手がいないので、どうしてもこの位置になってしまいますね」。パ・リーグ6球団の中でも投手陣の薄さから、この予想になったという。

今季の特別ルールとなる9回打ち切り制の導入については「ホークスにとっては絶対にいいですね」と、連覇に向けた好材料になるという。「12回までやらなくていいとなると、先発がもし早く代わった場合でも、どんどん投手交代ができる。投手陣が強いところ、ディフェンスが強いところが余計に有利になると思います。ですので、投手力の良いところが全体的に上位に来そうだなと思っています」。

怪我人や新戦力の台頭など様々な要因によって戦いぶりは左右され、この予想通りにはならないかもしれない。それでも、摂津氏は「誰かが活躍したら、とかの希望的な観測ではなく、これまでの実績や安定感などから考えると、やはりホークスの戦力は他球団とは違うと思います」と、古巣の2年連続リーグ優勝を予想していた。

○摂津正氏のパ・リーグ順位予想
1 ソフトバンク
2 楽天
3 ロッテ
4 西武
5 オリックス
6 日本ハム(福谷佑介 / Yusuke Fukutani)

© 株式会社Creative2