西武辻監督が開幕投手・高橋光に見せた“親心” 「普通の流れなら8回の頭から…」

8回途中3失点で勝利投手となった西武・高橋光成【写真:宮脇広久】

8回途中3失点で初の開幕投手を白星で飾った

■西武 4-3 オリックス(26日・メットライフ)

西武の高橋光成投手は26日、本拠地メットライフドームで行われたオリックス戦で自身初の開幕投手を務め、8回途中7安打3失点で白星を飾った。プロ7年目にして、今季は真のエースとなれるかどうかの分岐点になるかもしれない。あえて8回続投を命じたところに、辻発彦監督の“親心”がのぞいた。

7回終了時点で、4-2でリード。先発の高橋の失点はソロ本塁打2発による2点だけだったが、投球数は98に達していた。開幕戦独特の雰囲気、疲労を考えれば、8回の頭から最速160キロ右腕・平良海馬、9回には守護神・増田達至を投入し逃げ切るのが定石だっただろう。ところが、辻監督は8回も高橋を続投させた。案の定、高橋は先頭の紅林、1死後に太田にそれぞれシングルヒットを許し、一、二塁の1発逆転の状況で、前打席でソロを放っていた吉田正を迎えるに至り、ついに平良の救援を仰いだ。

さらに平良は暴投で走者を二、三塁に進め、吉田正の遊ゴロの間に1点を許して1点差に詰め寄られたものの、なんとか後続を断った。9回に登場した増田も、先頭のジョーンズに中前打を許したが、無失点でしのぎ切った。

辻監督は「普通の流れなら、8回の頭から(平良で)行くところ」であったことは百も承知。それでも「開幕戦だし、球数も少なかったから、(高橋)光成に任せました」と説明した。

8回途中3失点で勝利投手となった西武・高橋光成(右)【写真:宮脇広久】

被本塁打2はいずれも2死走者なしでの初球…「頂けない」と辻監督

この日の高橋は最速150キロの速球で相手のバットを押し込み、フォーク、カットボールのキレも良かった。球界を代表する投手である山本由伸に投げ勝っただけでも、十分合格点だろう。しかし辻監督はせめて8回まで、あわよくば完投させ、それを機にエースとしてひと皮むけさせたかったのかもしれない。結果的に勝利そのものを危うくさせ、試合後は「しびれました、本当に。序盤からいい形でリードしながら(3回終了時点で4-0)、1点1点スタスタと迫られて緊張した。最後はもう、増田に祈っていた」と苦笑を浮かべた。

高橋は昨季、8回まで無安打無得点に抑えるなど何度か快投を演じたが、トータル8勝8敗で“貯金”を作ることはできなかった。それでもチーム防御率が3年連続リーグワーストに低迷している投手陣にあって、昨季開幕投手のザック・ニールもコロナ禍で来日のメドが立たないとあっては、他に適任者はいなかった。

辻監督はもともと高橋には、他の投手に対するよりもひときわ厳しい言葉を投げかけてきた。もちろん期待の大きさの裏返しである。この日も「2死を取ってからのホームランで2点は頂けない」と苦言を呈した。6回2死走者で吉田正に118キロのカーブを、7回2死走者なしでは頓宮に146キロのストレートを、右翼席に放り込まれたが、いずれも初球の甘い高め。不用意と言われてもしかたがなかった。

高橋自身も「リズム良く投げられたが、回の途中で代わってしまい、中継ぎの方に迷惑をかけた。次回は絶対、イニングを投げ切りたい」と反省した。とはいえ、オフから伸ばしている“ロン毛”は黒星が付くまで切らないつもりだ。

試合後は、リードと3回の1号ソロで二重に援護をしてくれた森友哉捕手と一緒にお立ち台に上がった。森から「エースの貫録が出てきました」と持ち上げられた一方で、「髪はもうちょっと切った方がええんちゃうかなと思います」とオチに使われた。風貌はどうあれ、誰もが認める数字を叩き出してほしいものだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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