Vol.01 カメラから全てが揃う唯一無二のARRIの魅力とは?[ARRI my love]

txt:川上一郎(デジタルルックラボ) 構成:編集部

映画撮影用機材から照明機器、ポストプロダクションまで唯一無二の企業

図1:August Arnold氏(左)とRobert Richter氏(右)

ARRIは1918年に図1※1に示しているAugust Arnold氏とRobert Richter氏により創設された映画撮影用カメラ・レンズ、照明機器、ポストプロダクションを併せ持った唯一無二の企業である。撮影用カメラではハリウッドを代表するPanavisionがあるが、カメラとレンズが中心で照明機材は範疇外である。

さらに、フィルム撮影した素材をデジタルスキャンし、デジタル編集後にレーザープリンタでヂュープネガに焼き付けるプロセスでもスキャナーとプリンターはARRIの製品が業界標準だった。

1999年6月にDLPプロジェクタと反射型液晶プロジェクタによるデジタル上映のテストが業界関係者向けに行われた結果、デジタル撮影と配給・上映への動きが一挙に加速した。

当初のデジタル撮影への試みはHDTV撮影用カメラの転用であったが、2/3"インチサイズで16:9アスペクト比のセンサーに映画撮影用フィルムカメラで主流であった35mmフィルムフォーマットのPLマウントを搭載。そのため、使用するレンズの焦点距離と撮像された映像の画角が一致しない問題や、テレビ用カメラヘッドアンプの設計では映画作品で要求される暗部の階調再現性が不足している、ノイズが多い、フィルムカメラでの回転シャッタによる映像表現との違い等などの問題が山積していた。

業界をリードするデジタルシネマカメラ、ALEXA登場

ARRIは2009年秋にオランダ・アムステルダムで開催されたIBC2009でALEXAを初展示した。35mmフィルムのスーパー35フォーマットの撮影範囲をカバーする4:3アスペクト比をカバーする撮像範囲で色再現と階調再現性を追求したカメラであった。シネマ用カメラとしての色再現と階調再現性をメーカーとして担保するためにイメージセンサーは自社で設計し、シリコンウェファーへの加工は受託生産会社に発注することにより、将来的に安定供給する事業形態を選択している。

その後のALEXAシリーズの展開については表1※2に示している。撮影現場からの要望を入れてワイヤレスリモコンの付加、光学ファインダとミラーシャッタ装備機種の追加、当時の3Dブームに対応したカメラヘッドと本体部分を分離したMタイプ、4:3出力に特化した機種、そしてスタジオのフルリモコン対応カメラ等などと次々に新機種を投入していった。

表1-1

2014年には、ARRI社のデジタルシネマカメラとしては異色のビデオカメラ用レンズ規格であるENGマウントにも対応し、記録媒体もCFast 2.0のメモリーカードにProResで録画するオールインワンカメラのAMIRAを市場に投入し、ALEXAの持っている映像表現力を一桁安価に提供し話題を呼んだ。

2015年には映画館でのプレミア・ラージ・フォーマット上映の動きを受け、過去の70mmシネラマ時代に使用されていた65mmフィルムの撮像範囲をカバーするALEXA65を市場に投入し、かつハリウッド映画で多用されるドリーやドローン・マルチコプターでの撮影に対応できる小型軽量モデルのALEXA Miniを市場に投入した。ALEXAもセンサー部分の改良やカメラヘッド部分の改良も逐次行い、2013年5月にはXTシリーズを、2016年9月にはSXTシリーズを市場に投入し累計で5,000台を超える出荷台数となった。

表1-2

また、4K上映機材の普及などもあり、さらなる高精細映像の要求に応えるべく2018年3月にALEXA LFを市場に投入し、従来のスーパー35mmフィルムの画角に対して2倍の撮像面積となることからレンズマウントをラージフォーマット対応のPLマウントであるLPLマウントを対応レンズシリーズとともに展開し、翌年の2019年9月には撮影現場からの要望に応えてALEXA MiniのLF対応機種も市場に投入した。

2021年3月にはオールインワンタイプのAMIRAにライブ中継に対応するAMIRA Liveが加わり、本編の映画撮影から、スタジオでの収録、そしてENGカメラと同様な取り回しのできる機種にまで幅広く展開している。

表1-3

ALEXAシリーズのセンサーサイズ

ALEXA SXT & ALEXA Mini 28.25×18.17(mm)

ALEXA LF & ALEXA Mini LF 36.70×25.54(mm)

ARRI ALEXA 65 54.12×25.58(mm)

主要シネマカメラのセンサーサイズ

ARRIFLEX 768 Film Camera 52.5 23.0

35mm Film 24.9 18.1

Hassel BLAD H5D-50C Medium 43.8 32.9

VISTA Vision 37.7 25.0

ARRI RAW 4:3 23.76 17.82

ARRI RAW 16:9 23.76 13.37

Sony Venice 36.2 24.1

Panasonic Varicam 24.6 12.9

Canon C700F 36.1 20.1

RED HELIUM 29.9 15.8

RED GEMINI 30.7 18.0

Sony FS7 II 23.5 13.7

Canon EOS C300 Mark II 26.4 13.8

Blackmagic URSA Mini Pro 25.3 14.2

Panasonic EVA-1 24.6 13.0

市場で最高と評価されたALEV CMOSベイヤーセンサー

さて、最初のALEXAが発表された時点では、スーパー35mmフィルムでの4:3フォーマットになぜこだわるのかとの意見もあった。

その理由は、フィルム撮影でしばしば使用されていたシリンドルカルレンズによる水平方向を光学的に圧縮して撮影し、編集時に水平方向の画素情報をオーバーサンプリングして本来の正方形画素で撮影した映像と同等になるように復元するアナモフィック撮影が提案されたことからで、撮影監督からは広い画角で撮影できて編集時点での映像切り出し位置の微調整が可能になると支持を得ていた。

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