【解説】活用策が今後の焦点 最悪のシナリオ回避  三菱香焼工場売却

 長崎造船所香焼工場の大半は、三菱重工業から大島造船所に所有が移ることが決まった。世界屈指の造船施設が有効活用されないまま貴重な人材や技術が流出していく、といった最悪のシナリオは回避された。しかも、本県に長年貢献してきた企業に引き継がれるとあって、安堵(あんど)する関係者は少なくない。
 今後の焦点は大島がどう使うかだ。西海市の本社工場ではバルクキャリアー(ばら積み貨物船)建造に特化し、4隻同時の超効率的な生産体制を強みにしている。ただ、これを拡大するだけなら香焼の機能は持て余す。より付加価値の高いガス運搬船の建造設備を生かしたいところだが、三菱が中韓勢とのコスト競争に苦戦してきた経緯がある。大島はコンテナ船などを想定しているとみられるが、その活用策次第で必要な人材や技術、協力会社を含めた地元サプライチェーンの規模は変わってくる。
 そんな中、にわかに関心を高めているのが、国が推進し、国内市場拡大が見込まれる洋上風力発電。三菱は工場建設を欧州大手メーカーと共同で検討しており、香焼は有力な候補地。「今回の譲渡に伴い候補から外すわけではない」とする。これに大島がどのように関わるのか判断が注目される。


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