1人1台端末普及で日本のEdTech(エドテック)が加速化する!注目の技術・コンテンツ銘柄10選

GIGAスクール構想は、当初想定されていたよりも順調に進捗しているようです。端末の調達状況は、全自治体等のうち1,769自治体等(97.6%)が2020年度内に納品が完了すると見られます。

構内通信ネットワーク環境整備等では、2020年度内に86.2%。4月末までのほぼ新学期からの供用開始で97.9%と少し遅れているようです。しかし、教育のICT化を推進していながらも、遅々として進まなかったことを鑑みると隔世の感があります。

2020年度は、教育ICTのインフラ整備が中心でしたが、今後はどんな分野・業界に恩恵があるかを見ていきたいと思います。


文部科学省の出した方針とは?

文部科学省は、3月12日に2つのGIGAスクール構想に関わる通知を出しました。

その1つが、高等学校のICT環境整備の促進についてです。2022年4月から新学習指導要領に基づき、共通必履修科目「情報Ⅰ」が新設されます。そこでは、プログラミング、ネットワーク、データベースの基礎を学習する予定です。

後1年でICT環境を整備する必要があることから、小中の全てを整備した2020年度より需要は落ちてしまいますが、特需剥落を軽減する要素になると考えています。BYODの活用も考慮されていることから、セキュリティ企業にも恩恵がありそうです。(BYOD:ブリング・ユア・オウン・デバイス 個人が保有するデバイスを持ち込み利用すること。)

もう1つが、1人1台端末の積極的な利活用になります。特に注目したいのが、デジタル教科書・教材・CBTシステムの活用等についてです。デジタル教科書は、2024年度に本格導入の予定であることから、もう少し先になるでしょう。

一方、補助教材や動画教材などは、既に需要期に入ったと見ており、導入が進むのではないかと考えています。CBT化については、文部科学省が全国学力調査等をCBT化した「学びの保障オンライン学習システムMEXCBT<通称:メクビット>を、「デジタルならでは」を実現する見通しです。この実現例を元に、今後は様々な試験や検定がCBT化していくことが見込まれると見ています。

教育コンテンツ等のソフトウェアに需要が移るだろう

3月29日に、河野規制改革担当大臣と萩生田文部科学大臣は、1人1台端末環境を踏まえた具体策をまとめたことを発表。学習の習熟度に応じた指導を行うほか、不登校や病気の療養で登校できない者へのオンライン学習をもって出席扱いとすること。プログラミング学習や外国語学習への利用。さらに、高校や大学についてはオンライン授業で取得できる単位取得の要件を緩和することを発表しました。

この発表により、教育ICTインフラの整備後は、オンライン教材等の教育コンテンツや教員等の指導者を支えるソフトウェアへと需要が移ったと考えています。公教育の場だけでなく、どんな家庭でもオンライン教育が受けられる環境が整備されたことから、家庭や塾などでもオンライン教材が使われていくことになるでしょう。

エドテックや教育コンテンツを提供する企業に注目

経済産業省が運営するEdTech導入補助金にも注目しています。個別最適化された格差のない公平な学びと、プログラミング教育をはじめとする創造性を喚起するSTEAM学習の構築の必要性から、教育産業等が開発するEdTech(エドテック)サービスの学校等における導入を推進する事業です。(STEAM学習:Science(科学)、 Technology(技術)、 Engineering(工学)、Arts(芸術)、Mathematics(数学)を統合的に学習する教育手法のこと)

既に事業自体は終わっていますが、今年も予算が付くのではないかと期待されています。実際に予算が付いたのならば、エドテック事業を行う企業が注目され、物色されるでしょう。

エドテックや教育コンテンツを提供する企業に注目

これから需要が盛り上がっていくのは、デジタル教科書・教材・CBT化に関連する企業。そして、STEAM教育や学習の習熟度などを最適化した格差のない公平な学びを実現してくれるアダプティブラーニングを提供するエドテック企業に追い風が吹くと考えています。

また、英語4技能やプログラミング教育を活用するためのシステムを提供する企業にも引き合いが増えるでしょう。教員の志望者が減っていることから、教員の働き方改革を支援してくれる統合型校務支援システムを提供する企業にも注目していきたいと考えます。

以下、注目したい企業と特色をまとめました。

<文:投資調査部 饗場大介>

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