【高校野球】最速152キロ導いた“1日7合”と恩師との二人三脚…ドラフト候補・森木大智の夢

高知・森木大智【写真:学校提供】

同郷のスター、藤川球児に憧れた幼少時代

熱戦が繰り広げられた選抜高校野球。その舞台に立てなかった悔しさを力に変え、夏の甲子園を目指している球児がいる。最速152キロを誇るプロ注目の右腕、高知高・森木大智投手(3年)だ。同郷のスター・藤川球児氏に憧れ野球を始めた男は、自分を見出してくれた恩師と二人三脚で、最後の夏を目指す。【西村志野】

184cm、88キロの大きな体。小さい頃から、周りと比べ、身長はずば抜けていた。父は野球、母はバレーボール、姉は新体操と、スポーツ一家で育ったこともあり、昔から体を動かすのは好きだった。運動神経がよく、ベースランニングのタイムもチーム上位を誇る。

白ごはんが大好物。「多い時は1日7合は食べますね」と豪語する。朝は大きなどんぶりで、お昼には2リットルのタッパーに入れて食べる時もある。間食でおにぎりも食べて、夜にまたどんぶりを平らげる。鳥の唐揚げも大好き。大きいサイズを10個ほど、食べる時もある。食べ盛りの高校生だ。

好きな言葉を問うと「『愛』……ですかね」と照れ臭さそうに笑う。

「野球をとことん愛すというか、人が人を好きになるように野球も愛してくれないと野球の神様も微笑んでくれないと思って。中学の時から、練習用の帽子に『愛』という言葉を書いていました。練習している時にふと、上を目指すにはそういうところも大事かなと思って書きました」

野球を始めたきっかけは、同じ高知県出身で、昨季限りで現役を引退した元阪神タイガースの藤川球児さんだった。

「小さい時に藤川球児さんが投げているのをテレビで見て、そんなボールを投げたいなと思って始めました。分かっていても打たれないストレートとか、強気で押していくスタイルとか、すごく印象に残っています」

藤川さんとはまだ会ったことはない。2006年のプロ野球オールスターゲームで藤川さんとアレックス・カブレラ(西武)が対戦し、全球直球勝負。「火の玉ストレート」で空振り三振を奪ったシーンは、繰り返し動画で見ている。藤川さんのストレートに憧れ、野球の道に進んだ森木は、最速152キロを誇るストレートで自らもプロ注目と言われる投手になった。

中学でも指導してくれた浜口監督から、高校でも指導を受ける

高知高の浜口佳久監督も、森木の今後の姿に胸を膨らませている1人だ。出会いは、森木が小学生の時。高知県選抜チームでバーベキューをしていた森木に「練習に来てみないか」と声をかけてくれたのが、当時高知中で指揮を執っていた浜口監督だった。一度練習を見に行って、高知中進学を決めた。

中学3年時には、春、夏の全国大会で連続優勝を果たした。チーム全員で優勝するという目標を立て、チームの力を合わせてレベルアップしてきた、その過程が結果に繋がったと感じた連続優勝。森木にとってはこれまでの野球生活で1番嬉しかった。

この年、軟式球で中学生史上初と言われる最速150キロをマークし「スーパー中学生」として注目を浴びるようになった。春夏優勝という偉業を共に達成した最高の仲間と、もう1度頂点を目指したい。甲子園に行ってもう1度日本一になりたいと高知高に進学。森木が高校に進学するタイミングで浜口監督も高知高の指揮を執ることになった。

「大智がマウンドで投げているとこっちもわくわくするし、どんな選手になっていくんだろうという期待もするし、それはプロ野球の世界で自分たちだけじゃなく日本全国の皆さんに見てもらって成長を確認してもらえたらなと思います」

高知高では1年春の四国大会で公式戦デビュー。昨秋には自己最速151キロをマークし、順調に成長を続けきた。今では152キロまで到達。その成長の裏にあるのが、ともに歩んできた浜口監督の存在だ。

「力任せに投げているとか技術はまだまだだったけれど、体もすごく大きかったし、体のバランスや走る姿も良かったので、きっと伸びるなと思って声をかけました」

森木はそんな浜口監督を憧れの人で尊敬する存在だという。全国大会で春、夏連続優勝という快挙を成し遂げた仲間と恩師と、甲子園優勝を目指して歩んできたが、まだ聖地の土を踏むことはできていない。その目標を叶えるチャンスは、あと1回。今年の夏を残すのみとなった。

「この冬やってきたことを信じて、この夏は全員で熱く、全力で戦っていく。目指すべきは甲子園優勝なので、圧倒的に勝てるように頑張ります」

最近、森木は部屋に「感謝」という言葉を自分で書いて貼っている。小学生だった自分を見出し、6年間そばで見続けてくれた恩師への「感謝」を胸に、憧れの場所・甲子園で優勝し、恩師を胴上げするという夢を叶える。(西村志野 / Shino Nishimura)

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