3月は日経平均よりジャスダック平均が好調だった理由

3月は日経ジャスダック平均株価の値動きの好調さが目立ちました。3月9日から22日まで12営業日続伸し、2020年1月以来、約1年2か月ぶりの高値水準となりました。12営業日続伸は、2020年5月15日から6月2日の13営業日続伸以来の記録です。

一方、日経平均株価は30年半ぶりに3万円の大台を回復してからは上値の重い展開でした。今回は3月のJASDAQ市場を振り返りながら、中小型銘柄の分析に役立つ情報をご紹介します。


3月のJASDAQ市場を振り返る

JASDAQ市場全体の売買代金において、売買代金の上位10銘柄、上位20銘柄、JASDAQ-TOP20採用銘柄の合計売買代金が占める割合を調べてみました。背景が黄色に網掛けされている部分が、日経ジャスダック平均株価が12営業日続伸した期間です。

JASDAQ-TOP20は、JASDAQ市場に上場する銘柄の中から、時価総額、流動性、営業利益、配当金等を考慮して選定した20銘柄を対象とした株価指数です。つまり、JASDAQ市場での主力銘柄ということになります。

記録的な上昇が続いている期間において、主力銘柄の売買代金は増加基調であった一方、売買代金上位10銘柄、同上位20銘柄の合計売買代金が占める割合は低下傾向にあります。このことから、物色対象が分散していることが示唆されます。

ジャスダック銘柄を分析するには

上場企業の6割弱は3月期決算企業です。東京証券取引所の決算短信作成要領等によりますと、業績発表は遅くとも決算期末後45日以内に開示することが適当であるとされています。10~12月の業績については、2月中旬までの発表で出揃っております。

個人投資家が企業の業績動向を知るためには、決算短信だけでなく視覚的によりわかりやすい決算説明会資料などがあげられます。より多くの開示資料を目にすることで、自己で投資判断がしやすくなるでしょう。

時価総額が大きい銘柄ほど、カバーアナリストが多い傾向があります。個人投資家よりも企業の情報を多く保有しているアナリストによるレポートで、より投資判断がしやすい状況と考えられます。

一方、新興市場銘柄における情報開示は、東証1部上場の大手企業のIRに比べて不足していることが見受けられます。第3四半期の決算発表の説明会が行われない場合もあり、新興市場銘柄の投資判断はその情報量から自己判断がし難いとも言われています。そういった場合に、アナリストのレポートに利用するのもよいでしょう。

時価総額の小さい中小型株は、1人当たりカバーアナリスト数が少ない状況ですが、日経ジャスダック平均株価が連騰している間、JASDAQ市場の主力銘柄では5本のレポートがアップされました(Bloomberg調べ)。レポートを契機として、関連銘柄も賑わったことも考えられます。

また、東京証券取引所では、2022年4月を目処として、プライム市場、スタンダード市場、グロース市場の新3市場区分への移行を目指しています。レポート等をきっかけとして、JASDAQ市場に上場している銘柄の中でも、プライム市場の上場を目指す企業もあることに投資家の関心が集まり、売買が活発化したことも考えられるでしょう。

中長期の資産形成を考え新興市場銘柄に投資をする場合、個人投資家が自ら企業業績の中長期の先行きを予想することは難しいでしょう。新興市場への投資は、個人投資家よりもより詳細な情報を持つアナリストの見解が盛り込まれたレポートを活用することがより有効であると考えられるでしょう。

<文:投資情報部 野原直子>

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