薬師寺の宗祖「慈恩大師」制作 奉納へ 国宝・東塔の修理完了祝い 今泉信男さん

今泉さんが描いた慈恩大師

 長崎市在住の画家、今泉信男さん(73)が世界遺産として知られる奈良市の法相宗(ほっそうしゅう)大本山薬師寺の宗祖慈恩大師(じおんだいし)(632~82年)を描いた日本画を制作した。8日に同寺を訪れ、作品を奉納する。
 今泉さんは画歴53年。20歳のころから国内外で制作活動に励んできた。柔らかな筆致で四季折々の風景画を手掛け、仏画も得意とする。奈良は画題の宝庫で40年ほど前から毎年のように訪れ、薬師寺の高田好胤(こういん)元管主らとも交流してきた。
 今回、国宝「東塔」の約110年ぶりの解体修理完了を祝って寄贈を思い立った。今泉さんは「奈良を訪れるのは自分の心の浄化のためでもある。作品にさまざまな感謝の気持ちを込めた」と明かす。
 作品は縦60センチ、横40センチ。慈恩大師の肖像画を基にイメージを膨らませ、いにしえの雰囲気、ふくよかで威厳のある姿を今泉さんなりに表現した。
 こだわったのは表情。まなざしを力強くし、眉毛を一本一本描くなど写実的な表現も取り入れた。日本画の顔料と水彩絵の具を使い、あかね色の法衣の美しい色合いにも気を配った。
 8日は薬師寺の月例の法要日。寺は、今泉さんの作品と気持ちをありがたく受け止めたいとしている。今泉さんは「魂を込めて描いた作品を多くの人に見てほしい」と話している。

「魂を込めて描いた作品を多くの人に見てほしい」と語る今泉さん=長崎市片淵3丁目のアトリエ

© 株式会社長崎新聞社