池江&松山〝決意表明〟の裏で医療専門家「ワクチン接種できなければ東京五輪やめるべき」と緊急警報

凱旋会見で東京五輪への決意を語った松山(提供写真)

いよいよ土俵際か。東京五輪開幕まで100日となった14日に、競泳女子で白血病から奇跡の五輪出場を決めた池江璃花子(20=ルネサンス)と男子ゴルフの「マスターズ」で日本人としてメジャー初制覇を果たした松山英樹(29=LEXUS)が会見。五輪への思いを口にした。その一方で、大阪を中心に新型コロナウイルスの感染者数が急増するなど不安は尽きない。医療の専門家は選手らに対するワクチンの優先接種を提言。それができない場合は「五輪をやめるべき」と緊急警報を発した。

五輪本番の〝主役〟となる2人が決意表明だ。白血病からの完全復活を目指す池江は「五輪選手としてもちろん結果を出したい。今は大変な時期なので、そういう方たちに勇気を与えたい。スポーツの力を広めていきたい」と力強く宣言。13日に帰国した松山もグリーンジャケットを着て「五輪が無事開催されたら、それまでも試合があるのでケガには気をつけながら、金メダルに向けてしっかりと頑張りたい」と意気込んだ。

周囲の想像を上回るパフォーマンスで日本中を沸かせた2人。間近に迫った五輪を前に、さらなる活躍を期待する声が相次いでいる。だが一方で、大阪府では新たに1130人がコロナに感染。全国の感染者数も4306人となり、2か月半ぶりに4000人超えとなった。さらに、東京五輪・パラリンピック組織委員会は、21日に愛媛・松山市で予定されていた東京五輪の聖火リレーを中止すると発表。ランナーの走る機会がついに失われてしまった。

国際オリンピック委員会(IOC)のジョン・コーツ調整委員長(70)は「大会は確実に開催される」と強調したものの、不安は募るばかり。本当に無事に五輪を開催することができるのか。

ナビタスクリニックの理事長で感染症に詳しい久住英二医師は「希望するアスリートの方にはワクチンを打った上で競技に臨んでいただきたい」との見解を示した。

背景にあるのは、海外のワクチン接種事情だ。諸外国ではワクチン接種が進んでおり、米国ではすでに約35%の人が少なくとも1回は接種済みだが、日本の接種率は約1%未満。他の先進国と比べて遅れが著しい。

「米国とかいろんな国が『ワクチンを打って選手団を派遣します』となっても、お迎えする日本のほうが『ワクチンを打ってませんよ』というわけにはいかない。もし本気でコロナ禍の中で五輪をやるんだったら、アスリートやボランティアとか大会役員などの関係者にはワクチンは打ってあげるべき。大幅にリスクが減りますから」と現状に疑問を投げかけた。

その上で、世界中の五輪関係者を日本に招く以上、健康を守る必要があることから「コロナに感染させないようにちゃんと配慮するかというところが国家の姿勢として問われる。強制するものではないけど、基本的には打ったほうがいいと思うので、接種できる機会はつくったほうがいい」と訴えた。

とはいえ、関係者への優先接種は国民の理解を得ることが大前提。「五輪の時期は恐らく65歳以下の人にワクチンは届いていないと思うが、国民のみなさんに『競技に出る人やボランティアの人などにワクチンを打ちますよ』と提案して『いいですよ、やってあげてください』と言えば、アスリートらに優先して打てばいいと思うが『それはダメです』となれば、五輪ごとやめたらいい」と言い切った。

丸川珠代五輪相(50)は出場する日本選手へのワクチン優先接種について「全く検討していない」と否定的な見解を示す一方で、政府内では検討課題に挙げる動きもある。五輪開催に対する世論の〝逆風〟は変わらず吹き続ける中で、「安心・安全」な開催を実現するためにはワクチン接種は不可欠にも思えるが…。果たしてどうなるか。

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