犠牲ゼロの教訓を漫画に 97年の土砂災害 つながりの大切さ伝える 長崎・大園小、北陽小校区

土砂災害の教訓を伝える漫画冊子を作った大園小校区コミュニティ協議会の西嶋さん(左)と、北陽小校区コミュニティ連絡協議会の田川美佐子さん=長崎市滑石5丁目

 長崎市北部の市立大園、北陽両小学校や校区内の自治会などでつくる団体が、20年余り前に地元で起きた土砂災害の教訓を伝える漫画冊子を作った。予兆を住民間で速やかに共有し避難につなげ、犠牲者を出さなかった当時の逸話を紹介。住民関係が希薄になりつつある今、こうした横のつながりが地域防災に役立つことを若い世代に知ってもらう狙いだ。
 発行したのは「大園小校区コミュニティ協議会」と「北陽小校区コミュニティ連絡協議会」。1997年、同市北陽町で大規模ながけ崩れが発生し、当時の自治会長は経緯をリポートにまとめた。両協議会は防災活動の一環で、記録映像と合わせて入手。これらを基に「教訓を分かりやすく伝えたい」と、地元在住の漫画家、のざわのりこ氏に漫画制作を頼んだ。
 リポートなどによると同年7月19日未明、同町の斜面地が高さ60メートル、幅50メートルにわたり崩落し、隣接する家屋7軒を全半壊した。住民らは数日前から、周辺の壁面に亀裂ができたり小石が落ちてきたりするなどの異変を察知し、情報を共有。自治会役員が中心となり、災害発生の前夜までに避難を促したため、死者やけが人を出さなかったという。
 漫画は、役員や住民、警察などの奔走ぶりを親しみやすいイラストで表現している。制作に携わった大園の協議会事務局メンバー、西嶋和子さんは「防災には住民の組織力が大事だと伝えたい。漫画を活用して、地元小中学校での出前講座もできれば」と話した。計6千冊を作成し、地元の小中学生や事業所などに配る。

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