伝説の鬼コーチが矢野阪神をホメ殺し! 藤浪開幕は「お見事」佐藤輝には「30本期待」

虎の快進撃は佐藤輝の活躍あってこそだ

【伊原春樹 新・鬼の手帳】今年の阪神は昨年までとは明らかに違う。3月26日からのヤクルトとの開幕3連戦を3連勝と最高のスタートを切った。ここで印象的だったのが勝ち負けよりもチームの雰囲気。ベンチは活気づき、ムードが格段に本当に良くなっていた。

この風を呼んだのは、注目のドラフト1位新人の佐藤輝明内野手(22)だ。オープン戦では6本塁打を放ち、ドラフト制導入後では新人初となる〝本塁打王〟になっていたが、あくまでオープン戦の話。シーズンになると相手投手の攻めもガラリと変わってくるが、開幕2戦目の第1打席でアッサリとプロ1号を放った。このアーチは佐藤輝本人はもちろん、4番の大山やマルテ、サンズの助っ人勢にも火をつける結果となった。

新人が活躍すれば主力は負けられないと刺激を受ける。特に大山は去年、打率2割8分8厘、28本塁打、85打点と好成績を残し、自信を持ってシーズンインしたはず。佐藤輝の加入はさらなる発奮材料となり、昨年以上の成績を期待していいだろう。

打線がいいと投手陣も楽になる。来日1年目の昨年、先発では未勝利に終わったガンケルがすでに4勝を挙げているのは驚きだが「打線が打って助けてくれる」という安心感も好投を続けている一つの要因になっているはずだ。これに安定感抜群の西勇や青柳、制球がよく大崩れしない秋山。さらに復調してきた藤浪もいる。

藤浪はここ2、3年は投げてみないと分からない投手になっていたが、もともといいものは持っており、生まれ変わる何かのキッカケがほしかった。そんな彼を開幕投手に抜擢し、闘争本能と潜在能力を再び呼び起こした矢野監督の手腕は「お見事」としか言いようがない。これだけの駒が揃った先発陣は巨人にもヒケをとらなくなった。強いはずだ。

ここまで佐藤輝は打率2割1分4厘、5本塁打、10打点とまずまずの数字を挙げている。19試合で30三振は多く見えるかもしれないが、空振りはタイミングが取れた上で振り切っているから、そう心配することはないだろう。実戦を積むことによってプロのスピードにも慣れ、相手投手の球筋も覚えていく。打率も最終的に2割6分以上になるのではないか。本塁打は30本くらい期待できそうだ。

そんな黄金ルーキーの陰に隠れがちだが、阪神の快進撃に大きく貢献しているもう一人の新人も忘れてはならない。社会人出身のドラフト6位・中野拓夢内野手(24)だ。遊撃でいい働きをしている。

阪神の弱点は守備。それも遊撃手はここ数年なかなか固定できず、チーム最大の泣き所となっていた。開幕スタメンの木浪はいきなり開幕戦で失策を犯し、今年も遊撃問題は解消しそうにないと思っていたが、不安定な木浪を押しのけてポジションを奪った中野の守備がいい。1年目ながらすでに西武・源田、楽天・小深田らと遜色のない動きをしている。守備力では木浪は中野の足元にも及ばない。

規定打席には達していないが、打率はなんと4割6分7厘。2ストライクに追い込まれてからのしつこさもあり、打撃センスも上々だ。今後は調子をよほど調子が落とさない限り、遊撃は中野でいい。

走攻守、すべてにおいてレベルアップしている今年の阪神の強さは本物だ。対戦成績を見てみると5位のヤクルトに5勝0敗、最下位のDeNAには3勝0敗で、下位2チームから貯金を荒稼ぎした結果の首位という見方もあるだろう。しかし5位、6位との対戦を決して取りこぼさないというのが強いチームの条件の一つ。ここで1試合も取りこぼしていないのだから、首位は決してまぐれじゃない。

シーズンは長い。今はイケイケの阪神でも必ずや波はある。しかし、戦力が充実した今年は小さな波で収まるだろう。それでも今後の不安を指摘するなら選手が新型コロナウイルスに感染して離脱することくらいか。人気球団だけに遠征などでお誘いもあるだろうが、今出て行くアホはさすがにいないはず。球団も感染対策を徹底しているだろうが、球場は出入りする業者も多く、本当に気をつけてもらいたい。

リーグ3連覇を狙う巨人も新型コロナの影響で丸、ウィーラーらが離脱しつつも、上々の戦いぶりを見せている。セ・リーグは早くも阪神と巨人の一騎打ちムードとなりそうだが、今年の阪神にはこのまま行きそうな雰囲気がある。

(本紙専属評論家)

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