交通事故死亡者「ゼロ」

 日本が経済的にぐんと成長した1950年代、「三種の神器」が豊かさのシンボルになった。白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫を指す。60年代半ば、「3C」がこれに代わった。カラーテレビ、クーラー、カー(自家用車)と、Cを頭文字にする▲3Cが当時のシンボルならば、「カー」がもたらす「交通戦争」もまた、時代を映していたのだろう。交通事故で亡くなる人は、70年に全国で1万6700人を超え、最多に達した▲県内でもその年、160人を数えている。年によって増減はあるが、ここ20年ほどは減る傾向にあって、昨年は全国で初めて3千人を割り込み、県内は34人にまで下がった▲そしてとうとう…と、その数字に目を見張る。今月8日、交通事故で死亡した人が全国で1人もいなかったという。統計を取り始めて半世紀を超えるが、初めてのことらしい▲シートベルトの着用が義務化された。エアバッグが普及した。ドライブレコーダーを付けたりと意識も高まった。「戦争」と呼ばれた時代から一つ一つ、安全の策を積み上げてこその「ゼロ」だろう▲このところ県内では、交通事故で亡くなるのはお年寄りが大多数で、道路の横断中の事故が目立つという。策を練り、知恵を絞れば、こうした不幸な事故もきっと…。地道な「一つ一つ」を絶やすまい。(徹)

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