“灯火管制”

 夜間に敵機の攻撃目標になってはいけない、と明かりが漏れないように窓を塞いだり、照明器具に覆いを被せたり…。戦時中の日本で「燈火管制規則」が施行されたのは1938年4月のこと▲令和の灯火管制-真っ先に同じ連想をした人は少なくなかったようだ。東京、大阪などを対象に25日から出される3度目の新型コロナ緊急事態宣言に合わせて、小池百合子東京都知事が打ち出した“消灯要請”が話題を呼んでいる▲今回の緊急事態宣言、キーワードは「短期集中・強い措置」だ。酒類を提供する店には休業を要請、デパートも閉めてもらい、野球やサッカーは無観客、鉄道やバスでは減便や最終便の繰り上げも計画される▲小池氏の提案は、店舗の看板やネオンサイン、イルミネーションなど街灯以外の明かりを消すよう協力を求める内容だ。街を真っ暗にして人出を劇的に減らす作戦らしい▲胸の内を想像してみた。思えば、感染防止策と“抜け道探し”の応酬も根強く続いてきたこの数カ月だ。飲食店が時短で早じまいになれば昼から酒を飲む人々が現れ、公園や路上で宴会が始まる。電気ぐらい消さなければ、皆、言うことを聞いてくれない▲対策の手詰まり、都民への不信、政府や行政への不満…明かりの消えた東京、見えてくるものは何だろう。(智)

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