JR長崎駅前県営バスターミナル再整備 移転計画白紙、築57年 現地建て替えへ  具体的な検討これから

現地建て替えの方針が決まっている県営バスターミナル。築57年を迎え老朽化が進んでいる=長崎市大黒町

 JR長崎駅前にある県営バスターミナル(長崎市大黒町)。2022年秋の九州新幹線長崎ルート(武雄温泉-長崎)の暫定開業に向けて駅周辺の整備が急ピッチで進む中、築57年を迎え老朽化するターミナルビルの再整備は喫緊の課題となっている。昨年7月に駅北側への移転計画が白紙に戻り、改めて現地建て替えの方針が固まったが、規模や時期、整備手法などの具体的な検討はまだこれから。現状を探った。

 3月15日の定例県議会環境生活建設委員会。県営バスを運行する県交通局の幹部を前に、前田哲也委員(自民)は、現在のターミナルビルが耐震基準を満たさず、バリアフリー化も進んでいないと指摘し語気を強めた。「(建て替えに)最低でも7年、下手すると10年はかかる。二重投資かもしれないが、早急に耐震化工事をすべき。県は空港に(障害者や高齢者など誰もが旅行を楽しめる)ユニバーサルツーリズムの窓口ができて積極的に展開しようとしているのに、観光立県のバスターミナルのあるべき姿とはかけ離れている」
 ターミナルビルは1963年11月に完成した。地下1階、地上6階建ての鉄骨鉄筋コンクリート造りで、土地面積2238平方メートル、延べ床面積1万2379平方メートル。福岡や熊本など九州各県への高速バスや、長崎空港、佐世保行きの高速シャトルバス合わせて1日約300便超が発着し、1日約5千人が利用している。各階で所有者が異なり、県交通局や県物産ブランド振興課などのほか、長崎市や民間事業者が名を連ねる。
 老朽化が進み、県交通局は11年度から建て替えや移転の議論に入った。12年度に駅北側への新設移転方針が定まり、19年度に約600平方メートルの土地を取得。3階建てとする基本設計も済ませ、19年6月の定例県議会では、20年度から工事に入り22年度に供用開始する計画を説明した。
 その計画が一転白紙に戻った。新幹線開業を間近に控え、県内の経済界から駅前の路面電車や路線バスを含めた交通結節機能強化の検討を求める声が上がったのがきっかけだった。行政や交通事業者、経済関係者、学識関係者でつくる「長崎市中心部の交通結節等検討会議」が19年8月に発足。約1年の議論を経た20年7月、ターミナルの現在地建て替えなど駅前再開発の指針となる「長崎市中心部の交通結節機能強化の基本計画」をまとめた。

当初の移転予定地

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 単純にバスターミナルだけの建て替えにするのか。それとも周辺地域も巻き込んだ再開発、まちづくりに取り組むのか。県は基本計画に沿って2パターンを想定し、20年度に周辺の地権者や建物所有者、交通事業者に意向を聞くなど調査・検討に入った。昨年の道路法改正で、整備したターミナルビル運営を民間に任せる「コンセッション方式」も可能になっており、県は有力な選択肢として視野に入れているという。
 県は本年度からより具体的な検討に入り、地元の意見を丁寧に集約しながら合意形成を図っていく方針。勉強会なども重ね、本年度中に方向性を出したい考えだ。県都市政策課は「地元の理解を得ながら、2年ほどかけてまちづくりの絵を描きたい。協力してもらえる機運を高めたい」と意欲を見せる。一方で「(整備完了まで)どのくらいの期間がかかるのか。明確には言えない」とする。
 現ターミナルビルは、15年度の診断で耐震基準を満たしていないことが分かっている。移転新設する前提で、ビル所有者でつくる管理組合は耐震補強工事はしないことを決めていたが事情は変わった。建て替え時期のめどが立たない中、耐震の問題はどうするのか。また、建て替え中に機能を維持するための仮ターミナル設置場所をどこにするのかなども検討が必要だ。
 駅北側への移転計画が基本設計まで進みながら方針転換されたことで、「県のまちづくりは無計画で全然駄目」という厳しい声もある。県には「現地建て替えに変更してよかった」と評価されるような将来像を描く必要がある。


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