広島・中村奨は外野でも大成できる 元広島の名捕手・達川光男氏が“太鼓判”

4月16日の中日戦で初安打を放った中村奨成

【赤坂英一 赤ペン!!】「中村奨が捕手から外野手に回されたんは、打撃力を伸ばして戦力にするためでしょうね。結果を出し、捕手としての勉強もしていけば、近い将来、クリーンアップを打つ可能性もあるじゃろう」

こう語るのは、中村奨の先輩に当たる元広島の名捕手・達川光男氏だ。

中村奨は4月16日の中日戦で、4年目にして初安打を記録した。が、初スタメンだったこの日の守備位置は、広陵時代に甲子園を沸かせた本業の捕手ではなく、なんと左翼。この起用法の狙いはどこにあったのか、達川氏が解説する。

「中村奨も体ができてきて、二軍で結構打てるようになってきた(今季ウエスタン・リーグ7位の打率2割8分6厘、2本塁打、8打点)。足もカープで2番目に速い(同盗塁2個)。ちなみに一番速いんは羽月じゃったかな。守備範囲が広いから外野も十分守れるわけよね。ほいで、今の打線には鈴木誠、会沢、堂林のほかに右の長距離打者がおらん。長野は(今年)37歳で菊池涼も31歳。そろそろ近未来を見据えて、日本人の主砲になり得る選手を育てないといけない。そこに中村奨がハマればええということで、外野に回されたんでしょう」

広島では不動の正捕手・会沢が君臨し、控えの坂倉や磯村にも付け入る余地はない。実際、坂倉も一昨年、12試合、外野で出場している。

「最近の例を挙げれば、私がヘッドコーチをしていたソフトバンクの栗原もそうです。正捕手には甲斐がおるけん、外野の右翼でレギュラーをつかんだ。今の中村奨もポジションはどこだろうと、まずは試合に出て、結果を出すことが大事」

達川氏はさらに、中村奨のように捕手からコンバートされたレジェンド級の成功例を挙げた。

「日本ハムのガッツ小笠原(道大)、西武の和田(一浩)ベンちゃんです。特に和田は、正捕手・伊東勤という大きな壁があった。そこで外野に回り、小笠原と同じように2000安打も打つほどの大打者になった。ちなみに、ベンちゃんも足は結構速かったんよ」

とはいえ、中村奨に正捕手の道を諦めろと勧めているわけではない。

「以前、中村奨と話したとき『捕手が好きです』と言ってましたよ。ただ、今はとにかく一試合でも多く出て、打者として結果を出すことが先決。そうやっていろんな経験を積んで、捕手の勉強に生かしてほしいよね」

中村奨はどんな選手になるのか。その成長ぶりがカープの大きな見どころになりそうだ。
☆あかさか・えいいち 1963年、広島県出身。法政大卒。「最後のクジラ 大洋ホエールズ・田代富雄の野球人生」「プロ野球二軍監督」「プロ野球第二の人生」(講談社)などノンフィクション作品電子書籍版が好評発売中。「失われた甲子園 記憶をなくしたエースと1989年の球児たち」(同)が第15回新潮ドキュメント賞ノミネート。ほかに「すごい!広島カープ」「2番打者論」(PHP研究所)など。日本文藝家協会会員。

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