水素エンジン搭載のカローラ・スポーツがS耐テストに登場! 技術満載ながら「想像以上に普通に走る」

 4月28日、静岡県の富士スピードウェイでスーパー耐久シリーズ2021 Powered by Hankookの公式テストがスタートした。このテストに、トヨタ自動車がカーボンニュートラルなモビリティ社会実現に向けて、ORC ROOKIE Racingを通じて参戦することになった水素エンジン搭載のカローラ・スポーツが登場した。

 この水素エンジン搭載のカローラ・スポーツは、ガソリンエンジンから燃料供給系と噴射系を変更し、水素を燃焼させることで動力を発生させる仕組みをもつ。5月21〜23日に開催されるスーパー耐久第3戦富士SUPER TEC 24時間でデビュー予定のマシンで、この日が公の場での初めての走行となった。走らせるのは豊田章男オーナーが率いるORC ROOKIE Racingで、豊田オーナーはトヨタ自動車社長として、チームオーナーとして、そしてドライバー“モリゾウ”としてこの意欲的なマシンに乗り込むことになる。

 そんな注目の車両が、富士スピードウェイに登場した。まだカラーリングは本格的にはされていない状況だが、見た目はカローラ・スポーツにオーバーフェンダー、小ぶりなウイングが追加された程度。エンジンルームも見た目の大きな違いは感じられない。

 しかし、コクピット後方にはカーボンの隔壁が設けられ、内面は大きく異なる。「既存のエンジンを極力そのまま使うこと」を目指しており、既存のエンジンからは燃料デリバリー、インジェクター、プラグ等を変更。エンジンは直噴化され、異常燃焼をコントロールする。また水素タンク、水素配管については、すでに量産されているミライの技術を転用。ミライ用の水素タンクを4本(うち2本は長さ違い)を後席部分に搭載する。

 もちろん、レースに登場するにあたり安全性も考えられ、FIA国際自動車連盟、JAF日本自動車連盟の協力を仰ぎながら安全性を確認しつつ製作されている。速さを追求する場合なら、水素タンクを横に寝かせ、低重心に配置するのがセオリーとして考えられるが、タンクの搭載範囲をクラッシュから守るため、リヤの車軸中心から前方にタンクを収めること、ドライバーの車室とは分けることが考えられ搭載している。

 また、側面衝突等から守るため、専用のカーボン製のキャリアを製作。前方の2本のタンクは横から、後方の2本のタンクはうしろから交換できるシステムとなっている。また、後席ドアの内側には大きなカーボンで守られている。

 すでに車両は4月26日に走行しているとのことで、その際は佐々木雅弘と石浦宏明がステアリングを握ったという。「想像していた以上に“普通”に走ります」と石浦。

 この後、10時10分からスタートする公式テストでいよいよ他車とともに富士を走ることになる。 前例のない水素エンジン搭載車の参戦だけに、この日は市販車のジャーナリスト等も訪れるなど注目度は高い。また、ピット棟B等の奥側のパドックには、特別に水素ステーションも設けられており、こちらで水素の充填が行われるが、レースに向けて運用等は今後煮詰められていくことになりそうだ。

水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。前からの外観の印象は市販車と大きくは変わらない。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。前からの外観の印象は市販車と大きくは変わらない。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。水素タンクが積まれる後席はカーボンによって側面衝突等からも守られる。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。エンジンルームのパッと見は大きな違いは感じられない。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。前後フェンダーは拡大されている。
TGRコーナー側に設けられた水素ステーション
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。リヤウインドウからもカーボンが見える。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツのコクピット。インパネまわりは通常のレーシングカーだ。
水素エンジン搭載のカローラ・スポーツ。後席との間には巨大な隔壁が設けられている。

© 株式会社三栄