旧今井染物屋(上越市大町5)改修施し29日開館 バテンレース、手仕事文化発信

 上越市大町5の市文化財、「旧今井染物屋」の耐震改修工事などが完了し、29日に開館する。

 江戸時代以来、染物屋を営み、多くの職人や使用人たちが住み込みで働いていた施設で、往時の作業場の趣が残されたまま、バテンレースの常設工房や手仕事作家らによる実演、ワークショップの場に改修された。周辺の高田小町や高田世界館などと合わせ、まち歩きの拠点エリアに考えられている。

 市文化振興課によると、大町5はかつて高田の繊維業の中心地で、バテンレースを手掛けた有沢製作所(本社・上越市南本町1)の工場があり、創業の地。高田に住む3分の1の人が同業種に関わっていたとされ、基幹産業だった。現在、ブレードから製品まで一貫生産を行うのは吉田バテンレース(同市東本町2)だけとなり、次の世代につないでいきたいとの思いを込め、バテンレースを継承、発信する施設に位置付けている。

 内覧会に訪れた同町内の村山喜美子さん(58)は「昔から見てきて、今井さんのおばあちゃんがいらして、切手を買いに来ていた。当時の面影もあり、懐かしい」と話し、新しい活用に期待を寄せていた。

 木造切妻造り2階建て、延べ床面積458平方メートル。開館時間は午前10時から午後5時まで。休館日は月曜日(休日の場合はその翌日)。入館は無料で、体験は材料の実費。施設の占用利用は無料。駐車場は裏手に約20台分。

正面の外観 外格子はそのままに亜鉛鉄板を張り、色を塗っている。上部は造り込み式雁木になっている
ミセ バテンレースの常設工房。吉田バテンレースのミシンが置かれている
土間 そのまま残し、当時使用していた甕も置かれている
作業場 白色系の照明、エアコンを設置し作業しやすいように。机は旧針小で使われなくなった図工机を使用している
機械室 吉田バテンレースから借りたブレード織機を動態展示。織るところを見られる
造り込み式雁木 下が雁木で、今でいうロフト。床は既存の上に新しいものを張り、天井は杉板を何枚も重ね合わせている。男性の使用人の部屋だったといわれている
高い吹き抜けのチャノマ 手仕事作家らによる実演、ワークショップ、まち歩きの拠点に用いられる

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