阪神・チェンの再起に中村紀洋氏が太鼓判「自信はあると思うよ」

移籍後初登板初先発を白星で飾り、笑顔のチェン

【楊枝秀基のワッショイ!スポーツ見聞録】意表を突かれたファンも多かったに違いない。外国人の日本語なんて、せいぜい「アリガトウゴザイマス」「応援ヨロシクオネガイシマス」レベルと予想していたはず。だが、チェンをナメてはいけない。

29日の中日戦(バンテリンD)で阪神に新加入のチェン・ウェイン投手(35)が移籍後初勝利。ヒーローインタビューでマイクを持つと異能を発揮した。アナウンサーから最後に日本語でのコメントを求められると、流ちょうすぎる発音を披露し球場をザワつかせた。

「えー。久しぶりのナゴヤドームで投げることができましたので、すごいうれしいなんですけど、(球場の)名前変わってるかもしれないんですけど、僕のイメージはナゴヤドームなんですけど。ここで阪神ファンに来て応援してくれた方が自分が幸せなので、これからも応援よろしくお願いします」

この日は最初から通訳を伴い、インタビューを受けていた。だが、戦いの舞台はチェンが若き日々を過ごした第2の故郷・名古屋。かつて通訳なしで取材を受けていたチェンの日本語力を“地元メディア”は忘れていなかったわけだ。

2007年、チェンは左ヒジの手術を受け、リハビリのため一時的に育成契約となっていた。その時期、偶然にも中日にテスト入団し、同じ育成選手となっていたOBの中村紀洋氏(47)は、その日本語力を懐かしむ。

「当時から日本語はイケてたよ。全然、しゃべってたもん。通訳はいたけど。こっちの言っていることも恐らくほとんど分かってたと思うよ。おとなしい子やったけどね。(若くして海外挑戦する姿勢に)ハングリー精神があったよね」

強いハートで12年にメジャー挑戦。8シーズンで59勝の実績を残した。時を経て、今はライバルだった阪神の一員だ。移籍後初登板初先発で6回5安打1失点。中日時代の11年10月2日の阪神戦(甲子園)以来、NPBでは3497日ぶりの白星を挙げた。

台湾と日本。出身は違えどチェンも中村氏も中日OBで互いにメジャー経験者という縁がある。「(重圧のかかる阪神の風土にも)合うんじゃないの。ある程度、メジャーでもやってきて(NPB復帰も)自信はあると思うよ。あとはケガだけ。投手はごまかしが利かないから」

昨季のチェンはロッテで日本復帰も未勝利。今季も開幕二軍スタートで不安な見方もあった。だが、中村氏の言葉を聞くと虎党も安心するのではないだろうか。

☆ようじ・ひでき 1973年8月6日生まれ。神戸市出身。関西学院大卒。98年から「デイリースポーツ」で巨人、阪神などプロ野球担当記者として活躍。2013年10月独立。プロ野球だけではなくスポーツ全般、格闘技、芸能とジャンルにとらわれぬフィールドに人脈を持つ。

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