精巧な『新日本丸』の模型 制作に1年 長崎の浜永さん「巣ごもりの醍醐味」

実物の80分の1の大きさの「新日本丸」の模型=長崎市ダイヤランド1丁目

 海風を受けて大洋を進む帆船「新日本丸」-。長さ約1.4メートル、実物の80分の1の木製模型とはいえ、作りは精巧だ。長崎市ダイヤランド1丁目の浜永孝雄さん(70)が約1年かけて完成させた。
 自宅の作業場は100以上の工具で埋め尽くされ、本棚一杯に船の写真集が並ぶ。「手先はそれほど器用じゃない」。さっきまで、はにかんでいたのが、ピンセットを手に取った途端、目の色を変えて集中しだした。
 船に興味を持ったのは幼稚園の頃。三菱の造船所の職工だった父に連れられ、進水式を見た。自分よりもはるかに大きい船を見上げ「幼心に楽しかった」。お絵描きの題材はほとんど船になるほど魅了された。
 県庁に勤め、45歳ごろから長崎港周辺の開発構想に携わったのを機に模型を作り始めた。当初はバスで福岡のデパートまで通い、木材や金具、図案が入ったキットを買い求めた。今はインターネットオークションで調達。これまで世界各国の計14隻を作り、「生きがい」と語る。
 船底の曲線を出すために、細長く裁断した木板を湯に浸して変形させるなど「プラモデルよりも複雑で部品が多く、難しい」という。外国語の説明書を読む上で辞書が欠かせず、図案通りにいかないこともあるが、「自分で部品を作って、工夫できるのがいい」。忠実に再現するにはキットの材料だけでは足りない。新日本丸はホームセンターなどで購入した布に針金を通し、風で帆を張る様子を演出した。
 新型コロナウイルス禍で外出自粛中は一日中、制作に没頭。「巣ごもりの醍醐味(だいごみ)」と笑う。
 1月から15隻目の作製に取り掛かっている。黒い船体が特徴的な英国の軍艦ビクトリー号だ。今日もペンチ片手に作業台に向かう浜永さん。「ほら、少しずつ船になってきた」。その目は少年の瞳のように輝いていた。

100個以上の工具で埋め尽くされた作業場で、模型づくりに励む浜永さん=長崎市ダイヤランド1丁目

© 株式会社長崎新聞社