“慌ただしさ”のなかで得たハイパーカー初勝利。トヨタに発生した問題を技術責任者が説明/WECスパ

 TOYOTA GAZOO Racingのテクニカルディレクターであるパスカル・バセロンは、新型ハイパーカー『トヨタGR010ハイブリッド』が5月1日にスパ・フランコルシャンで行われた最初のレースで勝利を収め、日本メーカーは歴史的なチャプター・オープニングを主張したにもかかわらず、それはいくつかの問題を伴う“慌ただしい”ものだったと述べた。

 セバスチャン・ブエミとブレンドン・ハートレー、中嶋一貴が駆る8号車トヨタGR010ハイブリッドが2021年シーズンのWEC世界耐久選手権開幕戦で優勝した後、バセロンは6時間のコンテストが技術的な観点から「完全に素晴らしい」レースではなかったことを認めた。

 彼が語った問題は優勝した8号車と今レースのポールシッターとなった7号車の両方に影響を与えた。それは8号車は給油時のエラーによる序盤のペナルティ、7号車ではコーナー入口での再三のロックアップや終盤のシステムリセットなどが挙げられる。

 新しいシャシーとしてスパに到着した7号車は、先週初めに行われたプロローグ・テストで油圧と電気系統のトラブルに見舞われ、走行距離を伸ばすことができなかった。その後レースウイークを迎えた彼らは小林可夢偉のドライブでポールポジションを獲得するスピードをみせたが、土曜日の決勝レースでは厳しい戦いを強いられた。

 その要因のひとつに挙げられるのがフロントタイヤのロックアップ問題だ。これはレース中盤、ホセ-マリア・ロペスのドライブ中に7号車が91号車ポルシェ911 RSR-19(ポルシェGTチーム)に追突するアクシデントを誘発した他、スタートから4時間後に首位を走る可夢偉が8コーナー“ブリュッセル”でコースオフを喫しグラベルにスタックするアクシデントにつながった。

「私たちにとってポジティブだったのは、2台のクルマが最後まで残っていたことだ」とバセロンはレースを振りかえった。

「プロローグの初日に7号車に問題が発生したにもかかわらず、最初のレースの終わりまで2台が揃って戦えていたのは良かったと思う。

「一方、良くなかった点もいくつかあった。とくに最初のピットストップでいくつかの問題が発生した。7号車のエンジンが正常に再始動しなかったのが、まずひとつ」

「もうひとつは8号車の給油が短すぎたため、2回目のピットストップでペナルティを受けなければならなかったことだ」

 そのペナルティは36.5秒のストップホールドで、停車時間は最低給油時間をアンダーカットすることによって得られた時間に4を掛け、さらに5秒を加えたもの。

 ハイパーカーは最後の給油を除くすべての給油タイミングで35秒の最低給油時間が設定され、これに前のスティント使用したエネルギー量を最大エネルギー許容量で割った値が加算される。スパでトヨタGR010ハイブリッドに許された最大エネルギー使用量は964MJだった。

TOYOTA GAZOO RacingのトヨタGR010ハイブリッド
給油作業違反で36.5秒のストップペナルティを受けた8号車トヨタGR010ハイブリッド

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