巨人の〝堅物助っ人〟サンチェスを手なずけた桑田コーチの操縦術

サンチェス(左)の変身の裏に桑田コーチあり?

原巨人の「最終兵器」がいよいよ本領発揮だ。5日の広島戦(マツダ)で約2週間ぶりの登板となったエンジェル・サンチェス投手(31)が、7回無失点で今季2勝目をマーク。堅物として知られる助っ人に復活の兆しが見られたのは、桑田真澄投手チーフコーチ補佐(53)の〝スーパーコミュ力〟のおかげだという。

好投と炎上を繰り返す気難しい助っ人の姿はなかった。サンチェスは右肩違和感からの復帰登板でコイ打線を7回無失点に料理。チームを4―0の勝利に導き「テンポ良く、ロケーションも良く、球種を織り交ぜて、うまくいった。ここから乗っていければ」と笑顔を浮かべた。

2019年に韓国リーグで17勝をマークしたサンチェスは争奪戦を経て同年オフに推定年俸3億4000万円の2年契約で巨人入り。昨季は8勝も、首脳陣の期待には応えきれなかった。原監督から「ちょっとこう、利己的な形でね、見えるケースがあった」と指摘されたこともあった。

今季も雨の中で行われた4月6日の阪神戦(甲子園)で、ぬかるんだマウンドにイライラを隠せず3回途中6失点KO。同20日の阪神戦(東京ドーム)でも審判の判定に不服そうな姿を見せ、5失点KOと自滅して宮本コーチからキツく叱られている。

サンチェスはドミニカ共和国唯一の国立大、サントドミンゴ大で会計学を学んだインテリだ。チームには同郷のデラロサ、メルセデス、ウレーニャがいるが、神経質な一面があり、今ひとつ溶け込めていなかった。

そんな助っ人の殻を破ったのが桑田コーチだ。今季の巨人では攻撃中のベンチで同コーチが先発投手の隣に座り、アドバイスを送っている。サンチェスとは通訳を介さず直接やりとりするケースも多く、時には笑わせるなどリラックスさせている。

「桑田さんは現役時代にガリクソンから英語を教わるなど昔から語学習得に熱心だった。パイレーツでプレーして英語が得意なのは知っていましたが、サンチェスには母国語のスペイン語も交えて会話している。球場を引き揚げる桑田さんが『アスタ マニャーナ』(スペイン語で「また明日」の意)と声をかけ、気難しいサンチェスが笑顔で応じていました」(チーム関係者)。

操縦法が課題だった〝堅物〟を見事に手なずけた桑田コーチにはチーム内から「サンチェスの復活はあの人のおかげ」と称賛の声が上がっている。

最速158キロと潜在能力の高さには定評があった。このままサンチェスがローテーションの柱として定着できるかは桑田コーチの「超コミュ力」にかかっている。

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