エ軍・プーホルスがDFAに 「適切なタイミングなどない」とGM

日本時間5月7日、エンゼルスは通算667本塁打を誇る将来の殿堂入り選手、アルバート・プーホルスをDFAとしたことを発表した。DFAとは簡潔に言うと「メジャーの試合に出場する前提となるロースターの40人枠に登録されている選手を40人枠から外す措置」のことであり、プーホルスは10年契約の満了を待たずにエンゼルスを去ることが確実となった。エンゼルスのペリー・ミナシアンGMは「このようなことを行うのに適切なタイミングなどない」と語り、苦渋の決断であったことをうかがわせた。

ミナシアンによると、エンゼルスの球団フロントは2週間にわたってプーホルスの処遇について議論を続けてきたという。一塁にジャレッド・ウォルシュ、指名打者に大谷翔平を固定するのがチームにとってベストの選択肢であり、プーホルスにレギュラーとしての出場機会を与えることが困難になった。ミナシアンは「アルバートはベンチ要員ではない」と語り、プーホルスもレギュラーとしてプレーすることを希望しており、双方が納得したうえでDFAの措置がとられた。

プーホルスが21年間のメジャー生活で積み上げてきた667本塁打、2112打点、3253安打、2886試合出場はいずれも現役トップであるだけでなく、メジャーリーグの歴史上でも上位に位置する大記録である。1999年のドラフトでカージナルスから13巡目指名を受けてプロ入りし、2001年にメジャーデビュー。1年目から10年連続で「打率3割・30本塁打・100打点」を達成し、MVP受賞3度、ワールドシリーズ制覇2度など輝かしいキャリアを過ごしてきた。

エンゼルス移籍後はカージナルス時代のような打棒は見られなくなったものの、10年間で1181試合に出場して222本塁打、783打点を記録。通算500本塁打、600本塁打、3000安打のマイルストーンはいずれもエンゼルスのユニフォームを着て達成した。なお、今季はここまで24試合に出場して打率.198、5本塁打、12打点、OPS.622という成績にとどまっている。

プーホルスとエンゼルスの契約には「契約満了後10年総額1000万ドルの個人的サービス契約」が含まれているが、プーホルスが他球団と契約して現役を続行した場合、この10年契約はプーホルスの現役引退後にスタートするという。また、DFAとなったプーホルスはこのままエンゼルスからリリース(解雇)されることが確実なため、FAとなったプーホルスを他球団はメジャー最低保証年俸で獲得することができる(年俸3000万ドルはエンゼルスが負担)。

プーホルスを獲得する可能性のあるチームとしてホワイトソックスとカージナルスが浮上しているが、ホワイトソックスの関係者はその可能性を否定。プーホルスのカージナルス時代の恩師であるトニー・ラルーサが監督を務めており、ルイス・ロバートとエロイ・ヒメネスの故障で打線がグレードダウンしているものの、一塁には昨季MVPのホゼ・アブレイユがおり、指名打者の枠も開幕から高打率をキープしているイェルミン・メルセデスで埋まっている。プーホルスにレギュラーとしてプレーする機会を与えられる状況ではない。

一方のカージナルスも不動の正一塁手としてポール・ゴールドシュミットがおり、そもそもナ・リーグは指名打者制を採用していない。高額年俸のマット・カーペンターが代打要員としてベンチに控えており、「球史に残るスター選手の古巣復帰」というドラマを演出するためだけにプーホルスの獲得に動く可能性は低いとみられる。

今年のスプリング・トレーニングがスタートしたとき、引退報道を否定して「まだ何も決めていない。引退については今季終了後に考える」と強調していたプーホルス。しかし、レギュラーとしてプーホルスの獲得に動くチームが現れるとは考えにくく、このまま現役引退となってしまうかもしれない。長年にわたって「不良債権」呼ばわりされ、最後はDFAによる解雇。有資格初年度での殿堂入りが確実視されている球史に残る名打者にとって、あまりにも寂しい去り際と言えよう。

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