三菱、新型アウトランダー PHEVを2021年度中に国内導入! パリダカやランエボを支えた“ラリーアート”も復活へ ~2020年度決算報告にて正式発表~

三菱自動車工業は2021年5月11日(火)、2020年度通期(2020年4月1日~2021年3月31日)の決算を発表。コロナ禍の影響を大きく受け、世界販売台数で前年度比マイナス29%、2期連続の最終赤字と非常に厳しい結果となった。しかし一方で、2021年度に新型車「アウトランダーPHEV」の国内導入や、往年のラリー全盛期に活躍した“ラリーアート”ブランドの復活も宣言し、今期は黒字転換を予想。今後の展開に対し大いに期待が持てる発表となった。

三菱 新型アウトランダー 2022年モデル[2021年2月17日発表/3代目(写真は北米仕様)] [photo:三菱自動車工業]

2期連続赤字の三菱、2021年度は新車攻勢で復活を図る

三菱が行った決算発表では、2021年度の業績見通しと共に、同社の構造改革を目指す中期経営計画「Small but Beautiful」の新たな取組みが発表された。

販売が低迷した2020年度だったが、2021年度は新車攻勢による商品強化で販売増を図る。その柱は大きく分けて2つ。

三菱 新型「パジェロスポーツ」(日本未導入モデル)

三菱が得意とするASEAN向けには、主力モデルである小型ミニバン「エクスパンダー」(日本未導入)のビッグマイナーチェンジの実施や、2020年7月にビッグマイナーチェンジを発表したパジェロスポーツ(日本未導入)の世界各国への導入などを順次推進していく。

もうひとつの柱は、三菱を支える主力技術である電動化、具体的にはPHEV(プラグインハイブリッド)の商品強化だ。

2020年12月登場のエクリプスクロスPHEVに続き、待望の新型アウトランダーPHEVを2021年度中に導入

写真は2021年4月に先行発表された三菱 新型「アウトランダー」のガソリンモデル

新型アウトランダーPHEVの導入計画を前倒しで実施

三菱は、2013年に世界初のSUV型プラグインハイブリッド車として「アウトランダーPHEV」を発売。同社の主力技術として熟成を図ってきた。2020年12月にはコンパクトSUV「エクリプスクロスPHEV」も導入し、さらにラインナップを拡充させている。

写真は2013年に発売された世界初のSUV型プラグインハイブリッド、初代「アウトランダーPHEV」

5月11日に行われた決算発表では、PHEV商品強化の目玉として、2021年度に日本や豪州で新型アウトランダーPHEVの導入を明らかにした。

2020年7月27日に発表した三菱の新中期経営計画「Small but Beautiful」の中では、新型アウトランダーPHEVの発売時期を2022年度とアナウンスしており、導入計画も前倒しされていることがわかる。

日本仕様の新型アウトランダーはガソリン仕様を導入せず

三菱 新型アウトランダー(ガソリンモデル)は、三菱自動車工業 岡崎工場にて2021年2月より生産がスタートしている

新型アウトランダーは2021年2月17日にガソリンモデルが先行発表され、北米では早くも4月から販売も始まっている。日本ではガソリンモデルの導入は行われず、アウトランダーPHEVのみが発売されることが今回正式発表された。

現行型アウトランダーシリーズの国内販売は、9割以上がPHEVで占めている。そのため新型アウトランダーのガソリンモデル導入は見送られた模様だ。

なお豪州では、新型アウトランダーのガソリン車とPHEVの両方が投入される予定となっている。

パリダカやWRCなど、三菱のラリー参戦全盛期を支えた“ラリーアート(RALLI ART)”ブランドが復活へ!

[三菱自動車工業 2020年度決算報告資料(2021年5月11日発表)より]

中期経営計画「Small but Beautiful」に掲げられた“三菱車らしさ”の定義は「環境」と「安全・安心・快適」

三菱の新中期経営計画「Small but Beautiful」は、販売不振が続く欧州市場での販売網見直しや固定費削減といった構造改革、三菱の主力市場であるASEAN諸国での販売拡大などを掲げている。

その中で“三菱車らしさ”の定義として挙げているのが「環境」と「安全・安心・快適」である。特に「環境」については、先に挙げたPHEV技術はその最たるものだ。

アライアンス強化により相互補完を行いながら電動化を推進していく[三菱自動車工業 2020年度決算報告資料(2021年5月11日発表)より]

ここに、アライアンスを組むルノー・日産の電動化技術も積極的に導入。e-POWERなどのハイブリッド車や、EV(電気自動車)のラインナップも拡充させることで、2030年には全車種に電動車を用意する計画とした。

いっぽうで、これまで三菱が培ってきたモータースポーツ活動の取り組みも改めて再評価された。

もうひとつの三菱らしさの象徴が「ラリーアート」によるモータースポーツ活動だ

1970年代から始まった三菱のモータースポーツ活動は、特にラリーでの活躍が目立った。

中でも1980年代から2000年代の初頭にかけ、三菱 パジェロによるパリ・ダカールラリーでの優勝記録や、ランサーエボリューションによる世界ラリー選手権(WRC)連覇といった数々の栄光は、未だに世界中の人々の記憶に残っている。

三菱のモータースポーツ活動の象徴「ラリーアート(RALLIART)」(写真はWRC参戦車両のベースとなった「三菱 ランサーエボリューション トミー・マキネン エディション」)

この活動を支えてきたのが、三菱ワークスチームの母体である「ラリーアート(RALLI ART)」だった。トヨタでいう「TOYOTA GAZOO Racing」や、日産の「ニスモ(NISMO:ニッサン・モータースポーツ・インターナショナル)」に相当するものだ。

2002年、ダカールラリーで増岡浩選手が優勝した「三菱 パジェロ」(参戦車両)

しかし2010年、ラリーアートは三菱経営不振の影響により実質的な活動を停止。メーカー主体によるモータースポーツ参戦も休止状態にあった。

しかし、2021年5月11日に発表された中期経営計画の新たな取組みとして、三菱はラリーアートブランドの復活を宣言。まずは「ラリーアート」ブランドのパーツ販売から取り組み、今後モータースポーツ活動の再参戦についても検討を始める。

PHEVを柱にした環境対策の取り組みと、クルマの根源的な楽しさであるモータースポーツ活動を象徴する「ラリーアート」の復活。このふたつの“三菱車らしさ”を強化することで、低迷していた三菱の元気を取り戻す目論見だ。

[筆者:MOTA(モータ)編集部 トクダ トオル]

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