佐渡汽船(新潟県佐渡市)が債務超過解消に向けた取り組みの進捗状況を発表、今期末での約16億円の債務超過解消を目指す

今年4月29日に小木直江津航路に就航したジェットフォイル「ぎんが」。同航路の収支を改善するため、同航路に就航する船舶をこれまでの高速カーフェリー「あかね」に替えて同社が保有しているジェットフォイルに変更した

佐渡汽船株式会社(新潟県佐渡市)は14日、新型コロナウイルスの影響で2020年12月期の連結および個別の業績で債務超過となったことを受けて、債務超過解消に向けた取り組みの進捗状況を発表した。2月19日付の「債務超過解消に向けた取り組み」での基本方針に基づいた各種取り組みの実行により、2021年12月期末での債務超過解消を目指す。

佐渡汽船は2021年12月期第1四半期連結累計期間において、親会社株主に帰属する四半期純損失11億2,700万円を計上していることから、債務超過の解消には至らず、第1四半期連結累計期間末において16億4,400万円の債務超過となった。こうしたことから、同社は「経営改善計画」を策定し、持続的な収支の改善を図るとともに、資本増強に向けた各種施策を実施し、債務超過解消に取り組んでいる。

収支改善に向けた経営改善計画については大きく5つある。

1つ目は役員報酬及び管理職の給与・賞与の減額だ。役員報酬および部長、課長以上の管理職の給与・賞与の減額を2021年も継続しており、役員報酬は常勤取締役の報酬月額を25~30%減額するとともに部長、課長以上の管理職の給与並びに賞与を5~10%減額している。その結果、2021年12月期第1四半期では612万円の費用削減効果があり、第2四半期においても同程度の費用削減効果を見込んでいる。

2つ目は、小木直江津航路の収支改善だ。慢性的な赤字を計上している小木直江津航路の収支改善を目的とするため、4月29日から同航路に就航する船舶をこれまでの高速カーフェリー「あかね」に替えて、同社が保有しているジェットフォイルに変更した。この変更による船舶修繕費や燃料費等の削減効果により、年間約4億円の収支改善を計画している。

3つ目は、バンカーサーチャージ(燃料油価格変動調整金制度)の改定だ。燃料油価格の変動に応じた調整金を運賃に加算する燃料油価格変動調整金制度を2006年から導入している。同制度は基準の価格帯を超えた燃料油価格を5段階の価格帯に分けて、それぞれに対応した調整金を旅客、車両ならびに2輪車運賃に加算するものだが、導入から14年以上経過する中で、燃料油価格の上昇コストを十分に回収できていない状況となっていたため、関係機関との協議を経て1月1日に同制度を改定し、各価格帯の調整金を旅客で約 70%、車両で約6%、2輪車では約130%の引き上げを行なった。

4つ目は、貨物運賃の改定だ。消費税の導入および、消費税率の改定を除いて約40年間にわたり据え置いてきた貨物運賃について、佐渡島の人口減少、産業構造の変化に伴う貨物輸送量の減少、輸送コス トの増大などにより、現行の輸送体制を維持することが難しくなってきたため、4月1日から貨物運賃を10%引き上げた。 その結果、年間約6,200万円の収支改善を計画している。

5つ目は、グループ企業を含めた費用の圧縮だ。コロナ禍の経営基盤強化に向けた各社幹部との定期的な意見交換、ヒアリングの機会を設けてグループ企業の収支改善に向けた動きを推進する。同社では、外部に対して支払う業務委託費の削減として小木直江津航路の代理店手数料などの見直しを行っており、今後、繁忙期に向けてより大きな費用削減効果が見込まれるという。

一方、資本増強に向けた各種施策の実施については、国や自治体が行う新型コロナウイルス感染症対策の活用のほか、国や関係自治体に対する支援要請を行う方針だ。

具体的には、国の「令和2年度地域公共交通確保維持改善事業費補助金(離島航路運営費等補助金)」により、2021年 12月期第1四半期決算の連結決算において税金等調整前当期純利益が、個別決算においては税引前当期純利益がそれぞれ3億9,028万2,000円増加したほか、2021年12月期第2四半期決算において連結・個別ともに、国の「令和2年度地域公共交通確保維持改善事業費補助金(地域公共交通感染症拡大防止対策事業)」の追加交付分から、8,081万円を、同じく新潟県の地域公共交通感染症拡大防止対策事業費」の補助金の追加交付分から、5,711万円を特別利益に計上する予定だ。

また、2021年2月10日払込完了の佐渡市を割当先とする第三者割当増資の実施により、2021年 12月期第1四半期連結累計期間において、3億5,798万円の資本増強を実施した。これらにより、今期末の債務超過の解消を目指している。

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