【体操】五輪逃した寺本 あふれる涙で〝最強の補欠〟へ決意「私の最大限の使命」

寺本明日香(代表撮影)

体操の東京五輪代表選考会を兼ねたNHK杯(長野・ビッグハット)の女子個人総合が15日に行われ、五輪2大会(ロンドン、リオ)の出場経験がある寺本明日香(25=ミキハウス)が5位に終わり、東京五輪女子団体メンバー入り(4人)を逃した。

試合後、取材に応じた寺本は「メッチャ、すっきりしています!」と笑顔。涙はなく、やり切った自分に対して充実感を覚えていた。

エースの村上茉愛(24=日体クラブ)をケガで欠いた19年秋の世界選手権(ドイツ)では日本女子団体のキャプテンとしてチームを牽引し、東京五輪女子団体出場枠を獲得した。

さあ夢舞台…という矢先の昨年2月、床運動の練習中に左アキレス腱を断裂。東京五輪目前で「終わった」と断念したが、五輪は延期となった。

地獄から這い上がり、再び五輪出場に手が届く位置に来たものの、寺本は「正直、もし今(代表に)入ったとしても五輪でメダルを取れる演技はできない」と気付いたという。

「リオとロンドンを思い出し、選考会は通過点だと思っていた。でも、もし今、選ばれたとして気持ちが続かない。五輪のことを考えると体操が嫌になっちゃったんですよ」

記者団から進退を尋ねられた寺本は「引退」の2文字は口にしなかった。なぜなら、やるべきことが残されているからだ。大会後、田中光女子強化本部長(48)は寺本が団体メンバーの「補欠」になると明言し「選手団として同じ日程で合宿をやっていく」と話した。

この〝指名〟からさかのぼること約1時間前、寺本はすでに補欠としての決意を口にしていた。

「もし補欠に選ばれたら、今の私にできる最大限の仕事。みんなをサポートできるように精一杯、頑張ることが私の使命だと思っています」

そう言って誇らしげに笑った寺本。そして、最後に自らに体操人生を振り返った時、ついに涙腺が決壊した。ほおを伝う涙を手でぬぐいながら「すいません、いろいろ思い出しちゃって」と言葉を詰まらせた。

「本当に10年間よくやったなぁって思います。何か悔しいとかじゃない、違うんですよ。約10年間トップでいたから、いろんな思いがあったし、いろんなことがあった。ここまで引っ張って来られてホントに幸せだったなって思いました」

体操ニッポンが誇る〝最強の補欠〟として、五輪の舞台に臨む。

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