コロナ感染疑い 医療機関受診「公共交通使わないで。タクシーも」 移動手段に課題

 発熱や倦怠(けんたい)感などの症状があった場合の窓口「長崎県受診・相談センター」への電話相談が増加している。ただ、新型コロナウイルス感染も疑われるため、医療機関に出向く際には公共交通機関を使わないよう案内している。市民には「体調が悪いのにどうすればいいのか」と戸惑う声もある。
 長崎市に特別警戒警報が発令中だった2月中旬。市内の女性は朝から38.5度の熱があった。高校受験を控えた息子と人工透析に週3回通う夫との3人暮らし。「万一感染していたら」と不安になり、かかりつけ医に電話。ところが「発熱外来はやっていない」と言われ、県受診・相談センターを頼った。
 2キロほど離れた診療所を案内されたが、「移動に公共交通は使わないように。タクシーもだめ」と言われた。いつもの体調なら自分で車を運転するが、「事故でも起こしたら…」。運悪く、雪も降っていた。
 夫の通院先からは「次の透析までに、陰性か陽性かを確定して」とお願いされた。解熱剤を服用し、落ち着いたのを見計らって車で診療所に向かった。検査結果は陰性。「ほっとした」のが半面、「移動手段がどうにかならないものか」と疑問も残った。
 県によると、同センターの業務は民間に委託。保健師や看護師が24時間体制で対応している。かかりつけ医がいない県民に対し利用を勧めており、多い日は約140件の相談がある。県担当者は「感染していた場合に備えて公共交通機関の利用は控え、最終手段としては救急車を呼んでほしい」と話す。
 長崎市によると、重症となった40代男性は、7日から発熱や倦怠感があったが、医療機関を受診したのは14日だった。市担当者は「変異株は若い人でも重症化している。早めに相談し、命を守る行動を取ってほしい」と呼び掛ける。
 タクシーを使わないよう県が案内していることに、県内のタクシー業界関係者は「感染防止の観点から仕方ない」と受け止める。多くの乗務員が高齢で重症化リスクがあるためだ。一方で「乗務員のワクチン接種が進めば、感染疑いがある人を移送するサービスが普及するかもしれない」と話す。


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