代役ダ・コスタが任務完遂の初優勝。3連覇王者セラとワン・ツーフィニッシュ/SCB第2戦

 5月15~16日にブラジル・サンパウロで開催されたSCBストックカー・ブラジルの2021年第2戦は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)陽性反応となった開幕勝者リカルド・マウリシオ(Eurofarma-RC/シボレー・クルーズ)の代役として現フォーミュラE選手権王者アントニオ・フェリックス・ダ・コスタが緊急参戦。

 ぶっつけ本番ながらレース2を制し、SCB史上初の欧州出身者による勝利を記録するとともに、シリーズ3連覇の偉業を達成しているWEC世界耐久選手権レギュラーのダニエル・セラも2位に続き、名門Eurofarma-RC(ユーロファーマRC)がワン・ツーフィニッシュを飾っている。

 急遽レースウイークの木曜に現地入りし、2018年ゲスト参戦以来のSCB復帰を果たしたダ・コスタだが、同国を代表するF1トラックのインテルラゴス、ホセ・カルロス・パーチェでの練習走行から新規定のシボレー・クルーズ習熟に専念。2ヒート双方ともに30分+1ラップの決勝に向け、性能向上を果たしたマシンのセットアップ作業を進めた。

 その週末最初のヒートとなるレース1は、予選ポールポジションを獲得していたガブリエル・カサグランデ(A. Mattheis-Vogel/シボレー・クルーズ)がライバルとの接触によりレースタイム5秒加算のペナルティを科されながらも、2位アラム・コデア(Blau Motorsport/シボレー・クルーズ)を抑えてポール・トゥ・フィニッシュ。罰則適用後のギャップは、わずか0.569秒という辛勝で今季初優勝を手にした。

 このヒートで10位のガリッド・オスマン(Shell V-Power/シボレー・クルーズ)を0.037秒差で抑えて9位に入っていたダ・コスタは、続くリバースグリッドのレース2でフロントロウ2番手を確保する。

 スタートではともにポジションを守った先頭の2台だったが、3周目に入ったところでグリッド最年少のペドロ・カルドゥソ(KTF Sports/シボレー・クルーズ)に先行を許したダ・コスタは3番手に後退。その数周後にはデニス・ナバーロ(Cavaleiro Sports/シボレー・クルーズ)にもカルドゥソともどもエス・ド・セナのブレーキングでかわされ、ジリジリと順位を下げる苦しい展開となる。

 しかし作業義務のルーティンピットが始まった8周目を境に戦況は一変し、首位を走っていたオスマンのシボレーは作業ミスから大幅にタイムを失い優勝戦線から離脱。これでトップランを奪取したのがダ・コスタで、セカンドスティントに向け装着したニュータイヤのセットもハマり、力強いレースペースで後続を引き離しに掛かる。

デビュー2戦目を迎えたトニー・カナーンは、TCR規定ベースとなる『カローラGRスポーツ』のプロモーションにも参加
レース1はポールシッターのガブリエル・カサグランデ(A. Mattheis-Vogel/シボレー・クルーズ)が今季初勝利を飾っている
レース前から注目を集めたアントニオ・フェリックス・ダ・コスタは、レース1で9位としてリバースグリッドのフロントロウを確保する
レース2序盤はポジションを守ったものの、ダ・コスタにとって第1スティントはジリジリと順位を下げる苦しい展開に

■TGRブラジル勢は苦戦を強いられるレースウイークに

 その背後には、なんと24番手スタートから壮絶なオーバーテイク・ショーを演じたセラのクルーズが浮上し、ギリェルメ・サラス(KTF Sports/シボレー・クルーズ)との2番手争いに突入していく。

 サイド・バイ・サイドの勝負を繰り広げる2台のシボレー・クルーズに対し、その背後からチャンスを窺っていた新鋭ガエターノ・ディ・マウロ(KTF Sports/シボレー・クルーズ)が加わり、チームメイトを含めた三つ巴のバトルになると、セラとサラスの隙間を見つけたディ・マウロは強引に2台に割り込むようにボディをねじ込んでいく。

 するとサラスのマシンに乗り上げた同じKTF Sportsのクルーズは、ホームストレートでフロントから浮き上がるようにして宙を舞い、激しく地面に叩きつけられ制御不能に。そのままウォールにクラッシュする大きなアクシデントが発生してしまう。

 路面とコンクリート壁、2度のインパクトでマシン後部を大破したディ・マウロはすぐさま搬出され、ドクターヘリでサンパウロ市内のサンタ・マッジョーリ病院へ。ICUで救急処置を受けると、翌日には映像とともに無事が報告された。

 終盤に恐怖の瞬間を経たレースは、そのまま首位を維持したダ・コスタが19周のトップチェッカーを受け「3週連続、異なるマシンでの表彰台なんて最高! 心からこの仕事を愛している」と、フォーミュラEのモナコE-Prix優勝に続き、SCBを制した最初のヨーロッパ出身ドライバーとして歴史に名を刻んだ。

 しかし、最終リザルト上も正式なレース2勝者となるポルトガル出身のダ・コスタは、申請が間に合わずシリーズ規則の条項にある「すべての競技者は南米自動車連盟に所属することを義務付ける」との規約に合致しないため、チャンピオンシップポイントは付与されず。

 2位のセラ、3位のサラス、そして4位に滑り込んだリカルド・ゾンタ(RCM Motorsport/トヨタ・カローラ)らが上位ポイントを獲得し、セラは早くも選手権首位に浮上。一方のTOYOTA GAZOO Racing Brasil(TGRブラジル)勢は苦戦を強いられ、2014年SCB王者ルーベンス・バリチェロ(Full Time Sports/トヨタ・カローラ)やトニー・カナーン(Full Time Bassani/トヨタ・カローラ)、ネルソン・ピケJr.(Piquet Sports/トヨタ・カローラ)らはトップ10にも絡めない厳しいレースウイークに。

 さらにシボレー陣営でも、今季フル参戦組のLubrax Podium Stock Car Team(ルブラックス・ポディウム・ストックカー・チーム)、フェリペ・マッサ(シボレー・クルーズ)が15位、7位と見せ場なく週末を終えている。

こちらもSCB経験者ながら、今季が初のフル参戦となるフェリペ・マッサ(シボレー・クルーズ)は、15位、7位と見せ場なく週末を終えている
レース2でビッグアクシデントに見舞われた新鋭ガエターノ・ディ・マウロ(KTF Sports/シボレー・クルーズ)は、ICUで救急処置を受け無事が報告された
渡航制限を経て同ラウンドから復帰の隣国アルゼンチン王者マティアス・ロッシ(Full Time Sports/トヨタ・カローラ)は、バーストに沈む
シリーズ3連覇のダニエル・セラとともにワン・ツーを喜ぶダ・コスタ。続く第3戦は6月19〜20日のヴェロチッタ戦となる

© 株式会社三栄