絶好調

 右腕に死球を受け、大事を取って登板を回避した日。18世紀フランス王妃の“迷言”として流布された「パンがなければケーキを食べれば…」をもじって現地のファンが一言。〈投げられないならホームランを打てばいいじゃない〉-すっかりはしゃいでいる。興奮が伝わる▲バシッと乾いた衝突音がして、打球が高々と舞い上がる。ん、行った、とその行方を確かめながら、ゆっくりと一塁に向かって“確信ウオーク”…。米メジャーリーグ、大谷翔平選手の快進撃が止まらない▲これまで故障や手術で戦列を離れることも少なくなかったが、4季目の今年は開幕からエンジン全開-の観だ。マウンドに上がれば相変わらずの快速球、本塁打14本はただいま両リーグトップ▲「このままのペースなら55本塁打」と昨日はあちこちで気の早い試算が行われていた。〈別の生き物〉〈正気と思えない〉…称賛の表現も、気のせいか少しずつ無遠慮になってきた▲子どもの頃からエースで4番打者。野球好きの少年がそのまま大人になって、夢の舞台で投げて打って走って。新型コロナの重さが覆う今、貴重な爽快感を提供してくれる▲今、気がついた。現地とは時差がある。次の試合の時間によっては原稿に書いた数字が動いてしまうかもしれない…もちろん、大歓迎。(智)

 


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