フィリピン政府が“ワクチンロシアンルーレット”強行 接種会場に来るまでメーカー不明

ワクチン接種を受けるフィリピンの女性(ロイター)

まさにワクチンロシアンルーレット――。フィリピンの保健省は20日、今後、新型コロナウイルスのワクチンを接種する国民に対して、事前にワクチンの製造メーカーを通知しないと発表した。接種会場に来て、初めてどのメーカーのワクチンを接種されるか告知されるという。

フィリピンはワクチン外交を展開する中国から無償提供されたシノバック製ワクチンの接種を3月1日から開始。しかし、安全性に疑問を持った国民の半数近くが世論調査に「接種しない」と回答し、いまだ接種完了率は1%にも満たない状況だ。

「フィリピンでは2016年から17年にかけて、デング熱ウイルスのワクチン接種が行われたが、接種後に子供たちの死亡事例が相次いだ。そのワクチンは世界的に安全性は確認されていたが、事を重大視したフィリピン政府がワクチンの永久使用停止を発表。その記憶が国民に強烈に残り、新型コロナのワクチン接種が進んでいない」(フィリピン在住の医療関係者)

とはいえ、同国では新型コロナの累計感染者数が115万人以上、死者数が1万9000人以上となっている。接種率が上がらなければ集団免疫は獲得できず、経済の立て直しも出遅れる。そこでフィリピン政府は米英露中などの7メーカーからワクチンを調達し、接種を促進させようとしたのだが…。

「過去のトラウマを抱える国民は信頼性の高いワクチンを待っていた。首都マニラ近郊の接種会場で、17~18日に米ファイザー製のワクチンを求める市民が数千人規模で殺到して大混乱に発展。そこでフィリピン政府はワクチンのえり好みができないように、事前にどのメーカーのワクチンを接種するか告知しないことに決めた」(前出)

世界的にも米ファイザー製のワクチンは95%の有効性を示すなど信頼性は高い。一方、中国メーカーの各ワクチンは有効性50~80%といわれている。何より中国製というだけで身構える人は多いという。

フィリピン政府が強行した“ワクチンロシアンルーレット”は状況を打破できるか!?

© 株式会社東京スポーツ新聞社