長崎県議復党巡り不協和音 自民・北村会長奔走も支部認めず 次期衆院選危惧する声も

 自民党県連会長で衆院議員の北村誠吾氏(74)=長崎4区=が、2年前に離党した松浦市区選出の県議、石本政弘氏(66)の復党に奔走している。だが前回の県議選で石本氏に敗れた前県議が支部長を務める党松浦支部は復党を認めず、県連3役も「地元の意向を尊重する」との立場。昨年秋には次期衆院選の4区の公認候補をめぐり“再考騒動”が起きており、相次ぐ不協和音に選挙態勢を不安視する声も聞かれる。
 昨年11月、北村氏は松浦支部を訪ね入党希望200人の名簿を提出した。「入党手続きを進めてほしい」。この時北村氏は石本氏の復党との関連には触れなかったが、支部側はそう直感したという。
 複数の関係者によると、石本氏は昨年6月、支部に復党願いを提出したが認められなかった。このため復党を念頭に石本氏の有力支援者が自民県議の「ノルマ」とされる200人の党員確保に動いたという。北村氏は「石本氏の父親は地元農協の元組合長で、私もずっと付き合っていた。松浦に自民県議の支部がないため市民と県政のつながりが不十分だ」と話す。
 だが支部関係者は「支部には60人くらいしかいないのに、約3倍の入党を一度に頼まれても困る。現執行部を退陣させる意図でもあるのか」と疑念を抱く。
 2年前の県議選松浦市区では、無所属新人の石本氏が自民公認で当時の現職、高橋勝幸氏(72)を破り初当選。だが石本氏が自民党籍のまま1人区で公認候補と戦ったことが内規で除名処分などに当たるとされ、北村氏の勧めもありいったん離党した。現在も松浦支部長は高橋氏が務める。
 背景には県議会の会派「自民」と「自民・県民会議」の勢力争いもある。「自民」は衆院議員の谷川弥一氏(79)=長崎3区=と参院議員の金子原二郎氏(77)=長崎選挙区=、「県民会議」は衆院議員の加藤寛治氏(75)=長崎2区=にそれぞれ近いとされる。高橋氏は県議時代「自民」に所属していたが、加藤氏の元秘書の石本氏は「県民会議」に入った。
 現在、最大会派は17人の「県民会議」だが、うち自民党員は14人。一方、第2会派の「自民」は15人全員が党員で、党県連の3役を独占。「県民会議」側には石本氏の復党で県連内の勢力を拮抗(きっこう)させたいとの思惑があるとみられる。
 複数の関係者によると、先月の党紀委員会で北村氏が石本氏の問題を持ち出し意見が交わされたが、「当事者の話を聞いていないのでこれ以上の審議は難しい」として、その場はいったん収まった。県連内には「地元支部が復党を認めていないのに、いきなり県連レベルで議論するのはおかしい」との声も根強い。
 石本氏はその後も復党願いを支部に提出したが、再び受け入れられなかった。200人の入党希望も支部は「慎重に審査する」としているが、党関係者からは「入党のお金も払っているのだから、早く手続きすべきだ」との不満も漏れる。
 一方、北村氏や周辺も党紀委員会の再度の開催を模索してきたが、厳しい状況。ただ会長任期の今月23日までに石本氏の復党に「道筋を付けたい」意向だ。
 次期衆院選の長崎4区の公認候補を巡っては昨年秋、北村氏の地方創生担当相時代の失言などを理由に、松浦を含む地元5支部長から再考や公募を求める上申書が、県連幹事長の外間雅広氏(62)に提出された。党本部が「候補は原則現職」との方針を示しいったん決着したが、複数の地元党員からは「北村氏が復党を強引に進めれば地域がばらばらになるのではないか」と危惧する声も上がっている。

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