楽天・田中将大の本領発揮はこれから? 球界OBが指摘する“上がり目”と配球の偏り

楽天・田中将大【写真:荒川祐史】

22日のロッテ戦で7回1失点と好投した田中将大

楽天の田中将大投手は22日、敵地ZOZOマリンスタジアムでのロッテ戦に先発し、7回6安打1失点と好投した。だが、同点で迎えた8回に2番手の福山博之投手がソロ2発を被弾し、チームは1-3で敗戦。田中将は交流戦までを2勝3敗、防御率2.84で終えた。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で21年間捕手として活躍した野球評論家の野口寿浩氏がここまでの田中将の投球内容を分析した。

この日の田中は、かつてのチームメートで2013年に日本一に貢献した美馬と互角の投げ合いを演じ、ともに7回1失点。同点で迎えたラストイニングの7回には、2死からエチェバリアに左中間二塁打を浴び、続く荻野にもカウント2-1からスライダーが2球続けて外れて四球を与えたが、マーティンをスプリットで左邪飛に仕留め、窮地を凌いだ。

メジャー移籍前のような、ピンチで“ギア”を上げて鬼気迫る表情で剛速球を連発し、相手を圧倒していた姿とは一味違う32歳なりの大人の投球だった。この日は全102球中、スライダーが最多の37球(36.7%)を占めた。以下、ストレート27球(26.5%)、スプリット22球(21.6%)、ツーシーム10球(9.8%)、チェンジアップ3球(2.9%)、カーブ2球(2.0%)、カットボール1球(1.0%)。ストレート、ツーシーム、カットボールを合わせた「ストレート系」でも37.3%に過ぎず、変化球が多かった。

野口氏は「それが、メジャー7年間でアップデートされた“今の田中将大”の一面でしょう」と評した上で、シーズン中盤以降へ向けて大いに上がり目を見込む。「右ふくらはぎのヒラメ筋を痛めて今季初登板が当初の予定より3週間遅れたにも関わらず、防御率2点台はさすがです。夏場へ向けて体調はどんどん良くなっていくでしょう」と予測する。

「やや変化球に偏っている配球をストレート系と半々にすれば…」

配球にもまだまだ改善の余地があると野口氏はいう。「この日のロッテの打者の反応を見ていると、試合前のミーティングで『追い込んでからは変化球の可能性が高い』というデータを刷り込まれ、狙い球を絞っていることがうかがえた」と指摘する。

「ストレートもMAX151キロで、球威は十分あった。現在やや変化球に偏っている配球をストレート系と半々にすれば、相手は狙いを絞り切れなくなる。勝利数を予想するのは難しいが、もっと楽に投球できるようになるだろうし、球数を節約して完投できるようにもなると思う」と見ている。

「今は日本の打者のイメージも、自分の力量の認識も、8年前とのギャップを埋めている最中だと思う」と野口氏は言う。メジャーでは速い球に強い打者に対応するため、スライダー、スプリットなどの割合を増やしたマー君だが、日本ではまだまだ速球が有効のようだ。

メジャー移籍前最後の年(2013年)が24勝0敗、防御率1.27という空前絶後の大活躍だっただけに、ここまでのマー君を「想像していたのに比べると物足りない」と感じるファンもいるかもしれない。だが、野口氏の見立てでは、本領発揮はこれから。8年前ともメジャー時代とも違う、新しいマー君の投球を見せてくれるはずである。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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