SBK第1戦アラゴン:2021年シーズンの幕開けとなるレース1でレイが独走優勝。未開の領域、100勝目を挙げる

 スーパーバイク世界選手権(SBK)の2021年シーズン開幕戦アラゴンがモーターランド・アラゴンで行われ、レース1とスーパーポール・レースではジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)が優勝。レイはレース1で、SBKにおける自身100勝目を挙げた。
 
 レース2ではスコット・レディング(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が優勝。野左根航汰(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は3レースすべてでポイントを獲得した。
 
 2021年シーズンのSBKの開幕戦は、新型コロナウイルス感染症の影響で日程が何度か変更され、最終的には5月21日から23日にかけて行われるアラゴンラウンドで幕を開けた。今季のSBKには、2020年の全日本ロードレース選手権JSB1000チャンピオン、野左根航汰(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)が唯一の日本人ライダーとして参戦する。

■レース1:今季初レースはレイが勝利。自身100勝目を挙げる

 レース1は気温20度、路面温度38度のドライコンディションで始まった。今シーズン初のホールショットを奪ったのは、ポールポジションスタートとなった6連覇チャンピオン、ジョナサン・レイ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)。2番手にチームメイトのアレックス・ロウズ(カワサキ・レーシングチーム・ワールドSBK)、3番手にスコット・レディング(Aruba.it レーシング-ドゥカティ)が続く。
 
 オープニングラップを終えてトップ3は変わらないが、レイ、ロウズのトップ2と3番手のレディング以下との差は早くも開き始めており、1秒以上になった。一方、トップのレイと2番手のロウズとの差は僅差。トップ争いはカワサキ・レーシングチーム・ワールドSBKのふたりによって展開される。
 
 3番手のレディングの後ろには、4番手のチャズ・デイビス(チーム・ゴーイレブン)、5番手のトプラク・ラズガットリオグル(パタ・ヤマハwith BRIXXワールドSBK)、6番手のギャレット・ガーロフ(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)が続く展開。4周目にはラズガットリオグルがデイビスを交わして4番手、さらに5周目1コーナーでレディングをパスし、ラズガットリオグルは3番手にポジションを上げた。
 
 5周目の時点でトップのレイ、2番手のロウズと、ラズガットリオグルとの差は約3秒あったが、ロウズは次第にトップのレイから遅れ始め、ラズガットリオグルとの差が詰まっていく。
 
 11周目、ラズガットリオグルがロウズをとらえると2番手に浮上し、ロズは3番手に後退。ロウズの後方にはさらに4番手のデイビスが迫る。2番手のラズガットリオグル、3番手のロウズ、4番手のデイビスが集団となって周回を重ねていく。
 
 残り5周、レイは2番手以下に3秒以上の差を築きトップを独走。一方、2番手争いは終盤に入って激化した。ラズガットリオグルは終盤にペースを落とすと、そのラズガットリオグルにロウズが遅いかかる。何度もラズガットリオグルの隙をうかがうロウズ。しかし、ラズガットリオグルも攻めの姿勢を崩さずにインを締め、2番手を譲らない。
 
 残り2周、1コーナーのブレーキングでロウズがラズガットリオグルのオーバーテイクに成功。2番手を奪い返した。しかしその差はわずか。その後方では4番手のデイビスに追いついてきたレディングが交わし、2番手争いと4番手争いが僅差のまま最終ラップに入る。
 
 最終ラップ、ラズガットリオグルが再びロウズをオーバーテイク。ロウズがポジションを奪い返そうとするも、ラズガットリオグルがインを締めてオーバーテイクを許さない。しかし最終コーナーからの立ち上がりで、ロウズが駆るカワサキのZX-10RRが一気に加速。チェッカー直前でラズガットリオグルを交わし、2番手でフィニッシュラインに飛び込んだ。
 
 2021年シーズン最初のレースでウイナーとなったのは、SBKで6冠を果たしているレイ。この優勝はレイにとってSBKでの100勝目という記念すべき勝利であり、また、FIMのロードレース世界選手権において、ひとつのクラスで100勝を挙げた初めてのライダーとなった。
 
 ロウズが激しい2位争いを制し、3位は10番グリッドスタートだったラズガットリオグル。4位はレディング、5位は今季、チーム・ゴーイレブンに移籍したデイビス。そして2021年シーズン、唯一の日本人ライダーとして参戦する野左根航汰(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)は、16番グリッドからスタートして最終的に14位フィニッシュだった。
 

■レース2:スリックタイヤを履くレディングが独走優勝

 日曜日は10周で行われるスーパーポール・レースが、この日最初のレースとなった。この日は午前中、そしてレース中にも降った小雨の影響で路面コンディションの判断が難しく、状況は刻々と変化した。こうした状況からタイヤ選択が分かれ、この選択がレース展開にも影響することになった。
 
 レースは、1周目にポジションを落としたレイがその後ロウズやレディングを交わし、優勝。ロウズが2位、ギャレット・ガーロフ(GRTヤマハ・ワールドSBKチーム)が3位でフィニッシュした。野左根は16番グリッドからスタートし、周回を重ねながら少しずつ着実にポジションを上げ、9位でチェッカーを受けている。
 
 レース2はこのスーパーポール・レースの結果がグリッドに反映され、ポールポジションにレイ、2番グリッドにロウズ、3番グリッドにガーロフが並ぶフロントロウ。スーパーポール・レースの結果がレース2のグリッドに反映されるのは9位までで、このため野左根は3列目9番グリッドに並ぶことになった。
 
 レース2には雨は止み、気温11度、路面温度19度という低めの気温。路面は濡れていたが次第に乾いていった。ここでもライダーのタイヤ選択が分かれ、多くがインターミディエイトを選択したが、Aruba.it レーシング-ドゥカティのライダーふたりはスリックタイヤを選択した。
 
 ホールショットを奪ったのはレイ。2番手にロウズ、3番手にガーロフが続く。しかし3周目の14コーナーで、ガーロフがレイのインに入った瞬間にスリップダウン。アウト側にいたレイはグラベルに押し出された。ガーロフは転倒。その後再びレースに戻っている。レイも転倒をまぬがれすぐにレースに加わったものの、後退。その後、ガーロフにはロングラップ・ペナルティが科されている。
 
 トップに立ったのはラズガットリオグル。2番手にロウズ、3番手にマイケル・ファン・デル・マーク(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)、4番手にレイ、5番手にレディングが続き、ここまでがトップ集団を形成する。5周目にはスリックタイヤを履くレディングがレイを交わして4番手に浮上し、レイが5番手に後退した。
 
 6周目、ファン・デル・マークがラズガットリオグルを交わしてトップに浮上。さらにレディングがラズガットリオグル、ファン・デル・マークをパス。レディングがトップに立つ。
 
 トップに立ったレディングのペースはトップ集団の中でも群を抜いており、7周目には早くも2番手以下に約1.8秒差、その翌周には約3.4秒差をつける。レディングは独走体勢を築き始めた。
 
 その後方の2番手にはファン・デル・マーク、3番手にラズガットリオグル、4番手にロウズ、5番手にレイ。そして後方から追い付いてきたトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)が6番手につける。
 
 2番手のファン・デル・マーク、3番手のレイ、4番手のロウズのラップタイムはほぼ同じ。2番手争いは拮抗したままだったが、レイが13周目にファン・デル・マークをオーバーテイク。続くコーナーでもファン・デル・マークを抑え、2番手に浮上することに成功した。レイはその後、次第にファン・デル・マークを引き離していく。
 
 3番手に後退したファン・デル・マークは、残り4周の1コーナーでロウズに交わされる。ロウズが3番手に浮上し、ファン・デル・マークは4番手に後退した。
 
 レディングはトップをキープしたままチェッカーを受け、優勝を飾った。最終的に2番手以下に約9.8秒もの大差をつけての勝利となった。2位はレイ。序盤のアクシデントから追い上げての2位獲得。3位はロウズが入った。
 
 4位は終盤にファン・デル・マークを交わしたトム・サイクス(BMWモトラッド・ワールドSBKチーム)。ファン・デル・マークは5位だった。野左根は9番グリッドからスタートし、12位フィニッシュ。SBK初レースとなったスペインラウンドの3レースでポイントを獲得している。

2021年SBK第1戦アラゴン決勝レース2 スコット・レディング(Aruba.it Racing – Ducati)
2021年SBK第1戦アラゴン決勝レース2
2021年SBK第1戦アラゴン決勝レース2 ジョナサン・レイ、アレックス・ロウズ(Kawasaki Racing Team WorldSBK)

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