白毛のソダシが断然の主役と思われた牝馬クラシック2冠目の第82回オークス(23日=東京芝2400メートル)は、3番人気のユーバーレーベン(手塚)が快勝。対ソダシでは3戦3敗と苦汁をなめてきた同馬が、体調良化、距離延長をプラス材料に一変した姿を披露した。新ヒロインの今後の大いなる可能性を探ってみた。
桜花賞不出走のユーバーレーベンが大一番で大仕事をやってのけた。阪神JFから重賞で3戦連続の3着。賞金加算や本番への権利取りに失敗したが、オークスを最大目標にしてきた陣営にブレはなかった。満を持して頂上決戦へ。そこからすべての歯車が一気にかみ合う。
「スタートはとても良かった。ただペースが速いと思ってゴチャつかないように引いたら、後ろになって…。失敗したかなと思った。でも向正面でスムーズに外へ出せて、3~4角でペースアップした時も手応えは良かった。最後までじりじりと伸びてくれました」
優勝記者会見でM・デムーロの言葉が弾む。
レースはクールキャットがハナに立ち、ソダシは好位の一角に位置する形で流れていく、前後半5ハロンは59秒9―59秒4のほぼイーブン。後方待機組にも出番のある展開となった。ユーバーレーベンは直線で早めに先頭に立つが、最後まで脚色も集中力もまったく衰えない。東京2400メートルという舞台は最適で、長くいい脚を使う特性をフルに生かし切った。
「前走(フローラS3着)から距離は持つと思っていた。いろいろあったけど、ちょっとずつ調子が良くなっていったし、この馬を信じていた」とM・デムーロ。タッグ3戦目で最高の結果を出した。
いろいろあったとは? チューリップ賞を疝痛で使えずローテに狂いが生じた。早めにオークスへかじを切ったフローラSでは前走比10キロの馬体減。体調面が不安材料になりかけたが、陣営はきっちりと手を打ってきた。「フローラSで体が減った反省から、ストレスをかけないように調整しました。先週、今週の稽古はデビュー以来一番いい動きでした」とは、NHKマイルC(シュネルマイスター)に続いて今春GⅠ2勝目の手塚調教師。競馬場へ輸送されると一気にカイバ食いが落ちる点も、前日の土曜輸送で1日滞在することでクリア。今回は8キロ戻った体で登場できた。
紆余曲折はあったものの、この一年でユーバーレーベンは確実に進化した。これまで“ギアがローかトップしかない”と言われたように緩急のなさが欠点だったが、実際はスタミナを持て余していたのも事実。しかし、徐々に鞍上の導きに対処できるようになり、オークスでは女王にふさわしい堂々たる立ち回りだ。
ユーバーレーベンを所有する㈱サラブレッドクラブ・ラフィアンの岡田紘和代表取締役は「(マイネル軍団にとっての初クラシックに)チャンスはあったと思うんですけど、クラシックは運がないと勝てないし、今回はすべてがうまくいきました。父(今年3月19日に死去した岡田繁幸氏)も、種牡馬としてビッグレッドファームに導入したゴールドシップの産駒でクラシックを勝つことができて、すごく喜んでくれると思います。“やったよ”って伝えたいですね。今日は目一杯のレースをしたので、ゆっくり休ませて秋に照準を合わせたいです」と語った。
次なる目標は牝馬3冠目の10・17秋華賞になるだろう。順風満帆とは言えない中で春のクラシックを乗り越えたことは大きな糧になったはず。秋にはさらに成長した姿を見たいものだ。