弁当殻が基地襲う? 杉田水脈氏の発言発端、土地利用規制法案に逆風

小此木八郎氏(資料写真)

 自衛隊基地や国境の離島など安全保障上重要な施設周辺の土地利用を規制する法案が逆風にさらされている。身内である自民党議員の「意見表明」が発端だ。もともと慎重姿勢や反対の野党各党は態度を硬化。今国会の成立を断念した入管難民法改正案の二の舞いとなれば菅義偉首相(衆院2区)の求心力低下は必至で、盟友・小此木八郎領土問題担当相(同3区)は正念場だ。

 「反対運動の人たちが(隣接地で)食べた弁当の殻が基地内に舞い込むかもしれない」。21日、衆院内閣委員会で始まった重要土地利用規制法案審議の冒頭、自民党の杉田水脈氏の発言が審議の場を驚かせた。「鉄条網にリボンなどを巻く」といった具体的な表現で沖縄県名護市辺野古の新基地建設反対運動を示唆した上で、同法で取り締まるよう政府に促したのだ。

 委員会に先立つ11日の本会議では、沖縄県出の共産党・赤嶺政賢氏が辺野古をはじめとした反基地運動への法適用の可能性をただした。小此木氏は座り込みや双眼鏡などを使った観察、プラカードを置くといった行為は「中止勧告・命令の対象外」と答弁。理解を得ようと努めてきた。

 杉田氏はこの答弁を引用した上で「弁当の殻」などを持ち出し独自の「立法事実」を説いた。その日、沖縄弁護士会は畑知成会長名で「多くの基本的人権を侵害する恐れが極めて大きい」として廃案を求める声明を決定。同県を中心に反発が広がっている。

 杉田氏は性暴力被害に関連した「女性はいくらでもうそをつけますから」発言などで批判を浴び、党内からも問題視されてきた。「新法の目的は外資による重要土地の取得を防ぐこと」と強調する政府公安関係者は、「反基地運動の押さえ込みではない旨を確認したはずの与党から、なぜこんな意見が出るのか」と戸惑う。

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