「優勝候補は阪神とロッテ」 球界OBが読み解く2年ぶりの交流戦の行方

阪神・矢野燿大監督(左)とロッテ・井口資仁監督【写真:荒川祐史】

元捕手・野口氏「対広島3連戦延期は阪神にとってプラスしかない」

2年ぶりに開催される「日本生命セ・パ交流戦」が25日に開幕する。昨季はコロナ禍で中止。2年ぶりの開催はいったいどんな戦いが繰り広げられるのか。現役時代にヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として21年間活躍した野球評論家の野口寿浩氏が展望し、優勝候補には阪神とロッテを挙げた。

「優勝候補を挙げるなら、現在の勢いから見て阪神とロッテ。正直言うと、OBとして阪神に頑張ってもらいたい気持ちがあります」と野口氏は言う。阪神はドラフト1位ルーキー佐藤輝明内野手の活躍に引っ張られるように、セ・リーグ首位を快走中。背中の張りで2軍調整中の大山悠輔内野手も、22日のウエスタン・リーグ中日戦で実戦復帰し、交流戦開幕からの1軍合流にメドがついた。

広島における新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、交流戦開幕直前の3連戦が延期となった阪神。野口氏は「主力野手は代わりに2軍戦に出場しており、試合勘が鈍る心配はない。登板過多気味の守護神スアレス、岩崎、岩貞やマルテ、サンズの両外国人にとってはいい休養になった。阪神にとってこの3連戦延期はプラスしかない」と断言する。

「セ・パの差は基本的に発掘力と育成力の差」

一方、ロッテは12球団最多の215得点を誇り、打線が活発だ。ただ、正捕手の田村龍弘捕手が左太もも裏肉離れで4月28日に戦線離脱したのに続き、柿沼友哉捕手もPCR検査で陽性判定を受けて離脱。野口氏は「スタメンマスクが増えた佐藤都志也、試合終盤に“リリーフ捕手”として出場することが多い江村直也がどれだけ踏ん張れるかが鍵」と見ている。

交流戦は今更言うまでもなくパ・リーグ球団が過去15回中12回で最高勝率をマーク。セ・リーグ球団の合計勝利数がパ・リーグ球団を上回ったのは、2009年の1度しかなく、リーグ格差が顕著だ。加えて今季のパ・リーグは首位から5位までが5.5ゲーム差以内にひしめく大混戦。野口氏は「言い方は悪いが、今季のパ球団は『セ球団相手に取りこぼしていられない』と必死にくる。セ球団にとっては例年以上に厳しい状況です」と指摘する。

日本シリーズもパ球団が8年連続で制していることから、セへのDH制導入を求める声が上がるが、野口氏は「セ・パの差は基本的に、発掘力と育成力の差。ドラフトでのクジ運もあって、パにいい投手が集まり、それを打とうと努めるうちに打力も向上してきた。DH制の有無はほんの小さな部分だと思いますし、仮にセに導入しても、そこに外国人選手を連れてきて当てはめるのであれば意味がありません」と言う。

好調の阪神を筆頭に、パ・リーグ球団にどう対抗していくか。2年ぶりに行われる交流戦。果たしてどんな戦いとなるか、楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)

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